BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

古本屋さんでのやりとり-190530。

いろんなことがあり 少し気分が落ち込んでいるが
いろんなことがあったわりには 案外と元気だ。
でもちょっとさびしかったりとかもする。
心が少し、寒いのだ。

さっき、近所を散歩して 
駅前のちいさな古本屋さんにたちよった。
せまいところに本がむちゃくちゃあるうえに
さらに、ちいさなバーカウンターまであって
マスターがコーヒーやお酒をだしてくれる。
いままで本を買うか立ち読みをするだけで
座ってコーヒーを飲む、までは したことなかった。
でも今日はコーヒーくださいとたのんでみた。
いつも行きつけのお店で飲むものよりも
やや薄かったが 品のある優美な味だった。
もうひとり、年配の女性のお客さんがいた。
常連さんらしく、
ハイボールを飲みながらマスターと話していた。
「あの人誰だったかしら。がんで亡くなった女優さんよ・・・
ご主人が洋菓子職人の・・・ あー名前が出てこないわ」
どういう流れかちゃんと聞いてなかったが
そんなことを話してて
「がんで亡くなった女優さん(配偶者がパティシエ)」
の名前を思い出そうと何分もがんばっていた。
コーヒーを飲むあいだに、包んでおいてくれるように 
買うつもりの本を マスターに渡しておいたのだが
3冊で100円なのに2冊しか選んでなかったことがわかり
2冊で買ってもいいけど3冊のほうがお得だよといわれて
じゃあもう1冊選んできますということになり
3冊100円の箱から 筒井康隆の30年前の小説持ってきて
マスターに渡した。文学部唯野教授、学生時代に読んだなあ。
それでお会計をしてもらっているときに
ハイボールの奥さんが、あなた学生さん?と
話しかけてくださった。
いえ、社会人ですと答えたついでに 思い切って
「さっき話をなさっていた、女優さんの名前、
川島なお美じゃありませんか」
と言ってみた。
「それ!そうだわ!ありがとう!」
マスターが笑って「もっと早く教えてあげてよ」。
「いやーご自分で思い出したほうがうれしいのかなとおもって。
でも 黙ってるの しんどくなっちゃったんです・・・」
「あなた本がすきなのね、たくさん買って」
「よく来てくれるんですよ、こちらのお客さんは」
「本すきです。いつもここ来るの楽しみにしています」
「うれしいなあ。仕入れのしがいがありますよ」
「いまどきあんまりいないわよね、すてきな趣味ね」

これっぽっちのおしゃべりだが
なんだか心があったかくなった。
袋に入れてもらった本を抱えて
また来ます、といって店を出た。
おふたりともニコニコして見送ってくださった。

胸のうちを全部明かせるような人間関係ばかりが
いいってわけじゃないんだとおもう。
話してないことばっかりで
お互いに名前も知らないくらいでも、
お互いをなんとなく救う、
ということもあるとおもった。

心の痛みや孤独感がやわらぐきっかけなんて
人生を変えるような大きな事件などではなく
このようにほんのちょっとした
おしゃべりであったりする。