BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

Hくんの魂にささぐ。-190117。

梅原猛さんが亡くなってさびしい。



そのうえ きょう、
以前同じ職場で働いた人が、
若くして
亡くなっていたことを知った。

元気なら おそらく いま、
30をちょっとすぎたか…という
くらいだったとおもう。

朝、会社に向かう道で行きあうと
彼はいつも 歩きながら
伊坂幸太郎
「陽気なギャング」シリーズや
海堂尊
チーム・バチスタシリーズなんかを
新品のハードカバーで 読んでいた。

ちゃんと前をむいて
歩かないと危ないよ、と
声をかけると 
そーなんだけど
先が気になって、と
笑っていた。

研修で新人どうし
電車で移動したときに
当時 伊坂幸太郎とかを
読んでなかったわたしは
でも こういうのだったら
今、カバンに入ってるよと
諸星大二郎の「汝神になれ鬼になれ」を
出してみせたことがあった。

うわー、なに、この絵。
古くさいかんじ。
と 笑いつつ
電車に乗っているあいだじゅう
声をかけるのが はばかられるような
集中力を発揮して
しずかにそれを読みふけり
電車をおりるときに
なにもいわずにそっと
本を返してきた
何ごとか言いたそうだが
でもけっきょく言わずに
鼻のうえのメガネを直してたことを
記憶している。
もしかしたら 
おもしろかったのかも。

重いご病気にかかったそうだ。
お若いと進行も早い、といった
話を聞くけど、
まさにそうだったのかもしれない。

さぞかし怖かったろう。
納得いかなかったろう。
たまったものではなかったろう。
孤独だっただろう。
不安だったろう。
いろんなことを抱えて
苦しいきもちだった
ことがあっただろう。

だが ご病気に苦しめられ
亡くなるにいたるまでのその期間が
彼の生のなにもかもを
ぬりつぶしてしまうほど
重大なこととは 
わたしはおもいたくない。

病が発覚してから
死にいたるまで
彼はたくさん苦しんで
泣いたことだろうが
でも それ以上にたくさん笑って
いろんなことを体験した人生だった。
そうだったはずだ。
そんな30年あまりもの
かけがえのない年月が
死ひとつ病ひとつで
おじゃんになるはずは
ないとおもうのだ。

ほんとうに短いあいだで
わずかな接点だったけれども
それでも
彼の笑顔をたしかに見た。
本をあんなにたのしんで
読んでいたことを 
知っている。


・・・

生きるってのは
いったいなんなのだろう。
なぜこんなふうにいちいち
つまずいたり失敗したり
傷ついたりしないですむように
あらかじめ 
性能をととのえたうえで
われわれ人間をおつくりに
ならなかったのか。
神よ。
とか つい思うこともおおい。

わたしは苦しい。
だけど このように
いろんなことを感じることが
なにせ たいせつなようなのだ。
この世界に在って、命を燃やすことが
苦しいことであれかなしいことであれ
感じて生きるということが
それじたい だいじなのだということが
最近すこし理解できるようになった。
そんなことを自分が理解するとは
ちょっとおもってなかったが
納得できるようになってきた。

だけど逃れたい。
かなしい思いは 
たくさんだ。
心なんてものが なければ 
よかったのになあと、
やはり思わずにはいられない。
感じる心を投げ捨ててしまいたい。
そうすればきっともう
かなしくない。