BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-「くるみ割り人形と秘密の王国(2018)」-181203。

※以下、公開中の映画の内容に触れます。










原題:The Nutcracker and the Four Realms
ラッセ・ハルストレム
ジョー・ジョンストン監督、
2018年、米

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movie.walkerplus.com

原作のあらすじはだいたいここで知れる↓

くるみ割り人形とねずみの王様 - Wikipedia


インターステラー」の 
あのお嬢ちゃんが、
目のぱっちりした美人さんに成長して 
主役のクララを演じていた。
かわいかった・・・。

前評判で、本職のバレエダンサーが登場すると
聞いてて、それをたのしみにして観た映画だった。
アメリカン・バレエ・シアター
女性の現最高位ダンサー、
ミスティ・コープランドという人だ。
彼女のダンスを観られただけで、ほんと満足。
もっとみていたかった・・・

ミスティ・コープランドさんの公式サイト(英語版)↓
Misty Copeland


予告動画でもちょっと観られる↓
www.youtube.com


ロミオとジュリエットチャイコフスキー パ・ド・ドゥ、
白鳥の湖がちょっとずつみられる↓
www.youtube.com


バレエって
フィギュアスケートみたいなかんじで
20代くらいまでしかできないのかとおもっていた。
だけどじっさいは、30代 40代の人もたくさんいるそうだ。
ミスティ・コープランドさんも、36歳だという。

手足なが!肌きれい!笑顔がかわいい!筋肉!


ダンスのシーン以外の部分でいうと、

まず、ディズニーの映画・・・だけでなく
およそディズニー的なるものにふれたときに
ひねくれ者のわたしがいつも感じることを、
本作でもやっぱり感じたな笑

あと、ハルストレム監督の映画が
だいたいどれもそうであるように・・・
本作も、薄味だ。
とても美しいしちゃんとしているし
お金もかかっているし
これといって悪いところはないが
記憶には、くいこんでこない。

あとは・・・
さきに述べたことが、
クララ役の子がかわいかった。
ただ、
モダンな顔だなあ。
ビクトリア朝の英国の物語だから、
昔っぽい顔してない役者さんが 
彼女だけでなく けっこう
多かったのは気になった。
昔の顔だと なぜかわたしが感じたのは
クララのお姉さん役の子だった。

ストーリーは、
・・・
原作とほとんどまったくべつものだ。
原作の主人公であるマリーの
次女(それがクララ)が
本作の主役となっている。
べつものというか、
原作でマリーが持つ性格のおおくを
クララに持たせ、
原作でのマリーの姉弟
クララの姉弟になっている。
なにより
原作で、壊れたくるみ割り人形
やることのおおくを、
クララにさせている。
これはうまかった。
何を表現しようとしたかがよくわかる。
いわばみにくいアヒルの子だ。
クララは かしこい子なのだが、
友だちづきあいや
ファッションやダンスよりも
屋根裏部屋で機械いじりを
してるほうがすき、という
一般の「女の子」からは 
ややはずれたかんじの子だ。
わたしはそれでいいの、と信じたいし
自分を曲げる器用さもその気もないが、
みんなとうまくやれない自分を
恥じている節も。
そんな、ちょっと違った子、が
赤黒に金の縁取りの兵隊服を 
きりりと身にまとい
王国を救おうと奔走することをとおして
勇敢さ、行動力、聡明さといった
数々の美点を 輝かせはじめる。

原作では、壊れたくるみ割り人形
さいごに若く精悍な王さまに変身し
マリーを迎えにやってくるのだ。

さて、
正直なとこいうと
ダンスのとこ以外は
あくびしいしいで観てたので
よくわかんなかった部分が
多々あったが・・・
ようするに、
マリーは、シュガー・プラムが
いずれ王国の平和を乱す
危険な思想をいだくと
予見していて、
「第四の国」のマザー・ジンジャーに
汚れ役を演じてもらい、
シュガー・プラムが
狙ってくるであろう
キーアイテムを守らせていた
・・・ということかな。
マリーならそうするであろうことを、
マザー・ジンジャーが汲み取った
ということでもいいが。
だが
シュガー・プラムは 
彼女なりにマリーを敬愛してた
(心酔、偏愛、崇拝でもいいが)
わたしほどマリーのためをおもって
がんばっている者はいない!
わたしの考えを実行すれば
それがマリーのためになる!
なのに、わたしが愛したほどには
マリーは愛してくれていなかった。
それどころか、
このわたしを危険視していた。
わたしを四面楚歌の状態で
置いてきぼりにし、
マザー・ジンジャーなんかを
お目付け役にして
あろうことか 自分だけ・・・
逝ってしまった。
そんなかんじかなあ。
もちろんいっぽうでは 
マリーさえいなければ
いよいよ自分の計画を実行できる
という目論見もあったのだが・・・
人の心はそうやって 
相反する思いがふつうに
共存するものだ。
たぶんだが、
シュガー・プラムの心の痛みと怒りが、
あのような形をとって暴走したわけだ。
けっきょくマリーの思ったとおりに
なっちゃったわけなんだけど。

シュガー・プラムには
シュガー・プラムなりの
思いがあったとすれば
あの結末はちょっとかわいそう
というのが、わたしの感想だ。

キーラ・ナイトレイは 
ティム・バートンが本作の監督だったら
ヘレナ・ボナム・カーター
やらせそうな役を
はりきってたのしそうに演じてた。 
だが、もうとにかくかわいらしすぎて
貫禄と迫力に欠けた笑
ピンクのドレスでもりもり着飾っても
なんかにじみでてくる 
マッド感みたいなのが
あってほしかった。
クララに施すヘアメイクの
リボンの乱れとかに
多少は狂気のかけらが出ていたが。


ドラスティックな思想に暴走する
シュガー・プラムは 若く美しい。
彼女の計画を阻止しようとした
マザー・ジンジャーは、老いて人望が薄い。

シュガー・プラムの手勢は
ブリキ兵の大軍
マザー・ジンジャーの味方は
くるみ割り人形のフィリップと
かよわい少女のクララ、
あとちっぽけなネズミ、・・・と 
少なくて、弱い。

この対比構造と展開の妙は 
それなりにきいてたようにおもう。

フィリップ大佐を演じてた
若い役者さん
照れくさそうに笑った表情が
かわいらしかったのと
超棒読みのカタイ演技がかえって
初々しくてよかった。

クララとの別れのシーンで
ちょっと涙ぐんでいたのか
光の加減か
目もとがクリスタルのように
一瞬鋭く輝いた。
お肌が黒色だけに
映えて美しかった。

「寂しいほうが忘れないわ。
思い出が宝物になるの。」
クララのすてきなセリフだ。
彼女は戦いをとおして
お母さんの思い出を
宝物に変える強さが
ちゃんとの自分の心のなかに
備わっていることを発見したんだろう。
シュガー・プラムは
身を切られるような寂しさが
いつか美しいものに変わることが
あるなんて、信じられなくて
自分の心につぶされてしまった。

いつまでも見送るフィリップのほうを
クララは一度もふりかえらない。