BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

読書感想-栗本薫「ムーン・リヴァー」-181003。

もう1冊読んでみた。
5時間くらいかかった。

栗本薫
「ムーン・リヴァー」
(角川文庫)

f:id:york8188:20181004014954j:plain

https://www.kadokawa.co.jp/product/321706000444/


多作だったときいてるが
この作家さんの本はほとんど
読んだことがなかった
どれから読んだもんか、というのもあり。
書店でたまたま 見かけたので
読んでみた。遺作、とあった。

シリーズものの完結編らしい。
過去にいろいろあった男たちの
愛憎と性と生と死のドラマだった。

ほとんど会話文だから読むのが
かなりらくだった。

男性の同性愛であるというのが
わたしにはよかったようなきがした。
異性愛 か女性の同性愛だと
たぶんぜんぜん ついていけなかった。
遠いからかえって心のなかを
のぞきこんでわかろうと
いう気になった。

人の心のうつろいの残酷さと
痛みがよく描かれていたとおもう。
正直いうとさいしょのほうは
「まさかこの地味でだるくて
うじうじだらだらしたかんじが
これから300ページつづくのか」
とだいぶうんざりしたが
シンプルなつくりのために
登場人物たちの心のうごきに
注目せざるをえないようになっているのはうまいと感じた

刑務所にいるという主人公の恋人が、
罪を償ってでてくるところまで
描かれないでおわっていた。
彼がでてきたとき、主人公は
どうするのかなーとおもった。
きみと会わないあいだに
自分の心は決定的に
かわってしまったから
もう一緒にいることができないとか
言える男ではないかんじがする。

人の心はかわるけど、
それはすこしも
わるいことじゃないんだよなあ。

浮舟は門をとざしてでてこなかったが
主人公の恋人は刑期がすんだら
でてくる前提でとじこもった

生前の著者に師事して
創作をまなんだ友人がいる。
その人は、著者の創作は
いわば「下痢型」だった、といってた。
あんまりといえばな喩えだがつまり
もう、アイデアが、でてきちゃって
でてきちゃって、とにかく
それを忘れないように
とりこぼさないように
ただただスゴいいきおいで
書きつづけているタイプ、
みたいなことだとおもう

読んでて、理解できる気がした。
まず、たぶんあんまり
推敲されてなかった。
よどみがぜんぜんなかった。
それに
主人公たちの心のうごきは
とてもていねいに描かれるし
場面転換はほとんどないし
時間はそんなに経過しないので
全体的は雰囲気は
ゆったりとしているのだが
なにかはやくこのさきに
書きたいもの見せたいものがある
というジリジリしたかんじが
いつもどことなくあった。


正彦のきもちはよくわかった。
すごくつらいだろうとはおもうが
正彦のように一回でもひとりでも
ちからいっぱい人を愛せたら
やっぱりいいだろうなとおもう
愛したいのに愛を捧げる勇気がなくて
それで後悔するよりは。
けど、つらそうだなあ・・・