BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

読書感想「NOVA 1」「血の12幻想」-180901。

家にこもって本を2冊読んだ。
時間がかなりかかった。
庭に出てノラネコの頭をなでたり
フェルメールの画集をながめたり
だいぶ途中で脱線しながらなんとか読みおえた。
本がおもしろくなかったからじゃけっしてなく
単にわたしの体力みたいなもののもんだいだ。


来週からだいたいの小学校や中学校では新学期だなあ。
夏休みの課題でもくそくらえだったのは「読書感想文」だ。
あれがだいきらいだった。
じつにくそくらえだった。


「書き下ろし日本SFコレクション ノヴァ1 大森望責任編集」(河出文庫)

f:id:york8188:20180902010435j:plain

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309409948/

小林泰三「忘却の侵略」、藤田雅矢エンゼルフレンチ」、牧野修「黎明コンビニ血祭り実話SP」、飛浩隆「自生の夢」がおもしろかった。
小林泰三さんの小説は、会話文が特徴的だ。ときに、へたくそな英文和訳みたいで、カチカチであじけない・・・みたいな批判もきかれる。わたしはすごくすきだが。批判は批判でべつに理解できないということはない。「忘却の侵略」もまさにそんなふうだったけど、そこに主人公の不器用な感情がにじみでていてかわいらしい。
・「エンゼルフレンチ」は終盤のスケールが「エンダーズゲーム」のエンダーとヴァレンタインのラストのところになにかすこしちかくて、気が遠くなるようなところがいい。
・「黎明コンビニ血祭り実話SP」はタイトルがなんだこりゃ、で、読み出したら中身もなんだこりゃ、だった。こんなのいままで読んだことがない。冒頭に付された、大森望さんによる紹介文がなければ、あまりにもわけがわからなすぎて、きっと最後まで読めなかった。1回じゃ無理だったけど、紹介文にはげまされてもう1回読んだらするっと入ってきた。度肝をぬかれた。こんなのよく思いつくもんだ。このような物語に出会えるというのならば、「SF」ってものを、これからはもうすこし積極的に読んでいきたい。
・「自生の夢」わたしの理解可能レベルぎりぎりオーバーくらいの難解な物語だったが、感覚的にはわかったしじゅうぶんたのしめた。自分でどんどん学習していくタイプのテクノロジーが人間の生活を想定を凌駕しかきかえ押し拡げていく、というようなのは、もしかして昔からけっこう多くの作家に書かれてきたテーマなのかなとおもう。だが本作はそれがすてきな感性によって美しいことばで描き出されていたし、舞台装置がレトロっぽくて、読んでてたのしかった。
円城塔「Beaver Weaver」もあったが
これはざんねんだがわたしにはほぼまったく理解できなかった。難しすぎてついていけない。



津原泰水監修「血の12幻想」(講談社文庫)

f:id:york8188:20180902014554j:plain

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000202471

こちらは「血」をテーマとするホラーや幻想、ミステリーの短編アンソロジー
わかるわからないでいったら わたしにはこっちのほうが、わかるよそりゃ笑。
小林泰三「タルトはいかが?」、倉阪鬼一郎「爪」、山村正夫「吸血蝙蝠」、津原泰水「ちまみれ家族」をおもしろく読んだ。
・「タルトはいかが?」昔の作家さんなら迷った末にやめておくのであろう最後のもう1ツイストを躊躇なく入れるのが小林泰三さんだとおもった。ひやひやさせられるがギリギリ「入れてよかったね」ってなる笑。
・「爪」は文章がとてもするどく、さびしいかんじでよかった。何回も読みたい。
・「吸血蝙蝠」ふるくさいながら、さすがにベテランで、キリッとまとまっておりほんとうに読みやすい。必要なことはぜんぶ書いてあるが、書きすぎてない。お父さんのご乱心のシーンが怖かった。
・「ちまみれ家族」は笑った。こんなの読んだことがない。OVAになったらおもしろいだろうなーと一瞬おもったけどどうだろうな。
「早船の死」はちょっと「ダサい」印象。作家志望の高校生の習作みたいだった。「血の汗流せ」「遠き鼻血の果て」は「ちまみれ家族」系なんだろうなと理解したが、いまいちのりきれない。カッコイイことをやろうとして失敗したイメージ。
よくわからんのだが書くなら最後までちゃんと書いてほしいな。
「凶刃」はたぶん、切り裂きジャックの一連の事件が、手口とかターゲット選びの点で微妙に一貫性にかけていたといわれていることに 着想をえたものだろうなと理解。どうせなら殺人の場面がもっと ものにとりつかれたようにヤバイかんじだとよかったのにな。