BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『未来のミライ』『ペンギン・ハイウェイ』-180819。

きのうは『未来のミライ』、
きょうは『ペンギン・ハイウェイ』と
話題の日本製アニメーション映画を
たてつづけに観た。


未来のミライ
細田守監督
2018年、日本

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規模がちっぽけで、単調の感。
エピソードが総じて
ぜんぜんおもしろくなかった。
この映画が全体としてまずかったとは
けっしておもわないが、
話がおもしろくなかった、というのが
重大な問題におもえる。
主人公の4歳児「くんちゃん」の
声がぜんぜん合っていないのも
ずっと耳に入ってくる音だけに
気になった。

ひいおじいちゃんのエピソードは
かなりよかった。
主人公のくんちゃんが、
ひいおじいちゃんの
若かりしころの写真を指差して
「これお父さん!」
と、しきりに言うシーン。
ちいさい子はときに、
こういう謎の主張を、
妙に確信めいた口調で、
することがあると聞く。
たとえば、まだお母さんも
妊娠にきづいてない段階なのに、
「ママのおなかに男の子みっけ!」と、
自分にきょうだいができる未来を
示唆したり・・、
そんな話を自分の周辺でも、
じっさいいくつか聞いたことがある。

彼らはそういうとき、
空想の世界に遊んでいる、
というのともまたちがって・・・
いうなれば、くんちゃんのように、
大人の想像がおよばない、
また大人にはもうできない、
時空を超えた体験から
帰ってきたのであり、
その感想を端的に
大人に知らせようとしている
のかもしれない。

子どもは子どもなりに、
大人は大人なりに生きている。
または、
子どもは親がしらないうちにも
どんどん成長していく
(だから親はそんなに子育てに
完璧を期さなくてもいいんだよ)
ということを、
言いたかった映画だったのかも。


ペンギン・ハイウェイ』は、
かなりおもしろかった。

ペンギン・ハイウェイ
石田祐康監督
2018年、日本

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ダイナミックだが
どこかなつかしく
身近なかんじがする世界観
それと、説教くささが
排されているところがよかった。
音楽が美しかった。
設定の下敷きにはたぶん
不思議の国のアリス
鏡の国のアリスがあった。

子どもの可能性と健全な忘却を
同程度くらい視野にいれ、
がっちりと四角四面に
閉じていた枠組みを
つきやぶっていくような
勢いあるエンディング。
おねえさんがたった一度だけ
主人公を名前で呼ぶシーンと、
主人公のちいさな妹が、
生命の有限性という
たいせつなことに初めて気づく
シーンがよかった。


未来のミライ』は命の系譜、
ある特定の家族の
ファミリーツリーの物語だ。
劇中で樹木のたとえがあったように
えんえんとつらなり つづいていく
タテの、線のイメージがあった。
細田守監督作品で
わたしが知るものには
このように「家族」が主語に
なっているのがおおい。


ペンギン・ハイウェイ』は
タテではなく、
まえからうしろへ、
過去から未来へでもなく、
おおきな円環を描く物語だった。
とてもふしぎなのだが。
「血のつながり」
「絆」
「これまでのだれかひとりが
欠けても成立しえない」
・・・そういったものでなく
未来にはつながらない
だれとも・何とも・関係がない、
それなのにいまそこに確実に居て、
なにごとかをなして消えていく、
そんなものに
光をあてていたようにおもう。