BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想をおもに記録しています。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想「ジャンヌ・ダルク(1999)」/「悪夢探偵(2006)」-180719。

渡辺京二は 
ずっとそればっかり読んでいると
(べつに渡辺京二ばかりがそうじゃないけど)
ちょっとまいるし つかれるが
たまに読むと うたれる。

あの人ほどの書き手が 
子どもの罪のないおやくそくのように
「ウソをつかずに、正直に」あろうと、
あんなに慎重に。

・・・

※ここからは旧作映画の感想※

先日、
リュック・ベッソン監督の「ジャンヌ・ダルク
塚本晋也監督の「悪夢探偵
を たてつづけに観てみた。

ジャンヌ・ダルク
(The Messenger: The Story of Joan of Arc 
リュック・ベッソン監督、1999年、仏・米合作)

f:id:york8188:20180719012737j:plain

movie.walkerplus.com


悪夢探偵
塚本晋也監督、2006年、日本)

f:id:york8188:20180719012820j:plain

movie.walkerplus.com


どちらもかなり楽しんで観た。

ただ ジャンヌ・ダルクのほうが 圧倒的に
開封後賞味期限がながい作品だとおもう。
悪夢探偵よりもずっと古い作品だし
いまからみて もう12年もまえの映画だが、
なまなましさのようなもの、
あざやかなショックのようなものを
非常に強く 感じた。
これから10年後にまたみたとしても、かなり
おもしろく感じるのではないだろうか。

・・・

ジャンヌ・ダルク」は
ミラがほんとうにすばらしかった。
ジャンヌ・ダルクを描く伝記映画は
これからもいくつもでるかもしれないが
ミラのように、
ジャンヌその人を生きるがごとく演じてくれる人は
現れないようにおもう。

ミラは、
いわば やぼったい演技、
美しく見えない演技を、平気でやる。
たとえばニコール・キッドマンとか
メリル・ストリープとかだったら
こういうときこういう演技プランはたぶん 
選択肢から まっさきに はずすだろうな、
とおもわれるような、そういう演技だ。
お作法を知らないのかもしれないし、
まわりも教えないのかもしれない。
でもそれはたいてい正解だ。
彼女には
やぼったい演技がなんだかよく似合う。
そういう演技のときこそ、ひときわ美しいのだ。

日本でのこの作品のキャッチコピーは
「逃げない。」だったみたいだ。
本作のジャンヌは、
「神の使いではない、お告げをうけたわけではない」
と、その線にかんしてあくまでも否定的に描かれている。
彼女は だれよりも厳しく、自分の心に問うた。
最初こそなかなか
受け入れられなかったようだが、やがて
自分は「神の み徴(みしるし)」をみたのではなく
「自分の望んだ『み徴』」をみたのだと、
率直にみとめた。

少女時代に、森で剣をひろったことは事実であるし、
光をみたことや 幻視体験のようなことをしたのも
事実だけれども、
それらを「神のお告げ」ととらえたのは
ほかならぬ自分自身であったのだ、と。

ジャスティン・ホフマンが演じたあの謎の男は
ジャンヌの本心(良心)が
人のかたちをとったもの、と
いうことができるようだ。

「告解」をうけられず「ミサ」にもあずかれない彼女は
火刑を前に 自分自身の良心にたいしてしずかに
「告解」をおこない、
処刑台へと のぼっていった。

馬にのれない武器をもったこともない田舎むすめが戦争にいくとか 
王太子さまに謁見するとか
それが怖くて逃げたかったのではない。
怖くてもいくさでりっぱに戦ったから「逃げない。」ではない。
自分の心を見つめ、正直に、罪とおもうことを受け入れ、
理不尽にも課された極刑をいさぎよくうけて死んでいった。
自分自身から「逃げない。」ということだったのだとおもう。
それって、誰にとってもすごく難しいことだ。

・・・

悪夢探偵」は、公開当時、
評価はまったくかんばしくなかったようだ。
それが理解できないわけじゃないし、評価が低い理由も
わかりはするのだが、
しかし、いうほどひどくはなかった。
ひとつもいいところが見つけられないような
ひどい映画は ほかにいくらでもある。
本作には いいところがたくさんあった。

悪夢のシーンなんかはすごく怖かった・・・
松田龍平は独特の雰囲気がとても作品に合っていたとおもう。
監督の塚本晋也本人が出演して重要な役をやっていたが
あのキャラクターもとてもよかったように感じた。
安藤政信がやった 若手刑事の
「ずっとまえからわかってましたー!!」と叫びちらし
悪夢のなかで暴れまわるシーンは
鬼気迫るものがあり、ふるえあがった。
Hitomiは 棒読みの大根演技だったかもしれないが、
ああいうかんじの人は現実の生活でも
いなくはないとおもう。
演技経験があさいわりには、
健闘していたほうではないだろうか。

Hitomiが演じた女性刑事の
幸福な 過去の記憶に触れたことで 
探偵のほうは、
できることならもう一度 自分も
心のやすらぎをえられる可能性を信じて
前向きに生きてみたい・・・という
きもちをとりもどしたのかもしれないが、
あの男のほうは、
そういうきもちに一瞬はなったかもしれないにせよ
罪の意識と絶望感にふたたびおしつぶされて
あのようなことになったのだろう。