BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

デニス・テンさんに捧げる。-180721。

デニス・テンさんが亡くなったことは
ほんとうに残念だ。
でも、
彼が亡くなったというその事実や、
報じられている むごい最期よりも、
ずっとだいじなことがあるとも思える。
それは彼が
多くの人に愛されたことだ。
多くの人を愛したことだ。
人生で獲得したであろう えがたい体験、
幸福、笑顔、友情、涙、うずまいた感情、
そういったものこそがだいじなのだとおもう。
亡くなったからといって、
その死にざまがむごかったからといって、
それでぜんぶがご破算になるほど
彼の25年間は安くない。

デニス・テンさんのスケートは
どこか折り目正しく、美しかった。
彼とまったくおなじ滑りをする 
スケーターは あたりまえだがひとりもいない。
人間 ひとりひとり違うからだ。
デニスさんはデニスさんひとりだ。
たったひとつしかなかったのに、
それが失われてしまった。
さびしい。

でも、ひとつしかなかったそれが
どんなふうに輝いたか、に 目をむけることができる。
たぶんだが デニスさんも そのほうが
死んじゃったね、かわいそうにといわれ 泣かれるよりも
うれしいのではないかとおもう。
彼は生きたのだから。

亡くなってしまったね、かわいそうだ。では
それでおしまいのかんじがするけれども・・・

ある人がどんなふうに生きたかを 
みることができれば
ほかの人がどんなふうに生きるかを 
みることもできるかもしれないし、
では自分はどんなふうに生きるか、と 
考えることもできるかもしれない。
ひとつしかなかったのだ、ということを
少しでも考えることができれば
ひとつしかないから、できるだけだいじにして、
そまつにしないでいようと、
思うことができるかもしれない。
他人のそれであれ 自分のものであれ、だ。