夢をみた。
勾配の急な階段道を 歩いてのぼっていた。
とてものぼれないとおもうほどつらい道ではなかった。
ただ、のぼりきったところで人と待ち合わせをしていた。
時間がややぎりぎりだった。ちょっとあせっていた。
突然、足が前にでやすくなった。
だれかがうしろから
ふくらはぎかおしりをグイグイ押して
前に進ませてくれているのだ。
ラクになった。
「ありがとうございます!たすかります~」
と声をかけたが、そのときはうしろをふりかえらなかった。
踊り場についたときに みてみると、
押してくれていたのは みしらぬ お若い女性だった。
彼女は下半身に障害があって、
自力で立つことも歩くこともできなかった。
彼女の服は、
前の部分が よごれて、破れているところまであった。
車いすなどを使っていなかった。
這って、おひとりで 階段をのぼってきたようだ。
あまりのことに 一瞬、息をのんだ。
どう言うかまよった。
わたしのほうが手をかさなくちゃならなかったのに
と いうのはかえって失礼かもと。
ラクにのぼれてたすかった、ありがとうと
謝すだけにとどめた。彼女は笑っていた。
どうするかまようことはできなかった。
おぶってさしあげるほどの力はない。
階段以外の道もない。
横についていっしょに
のこりの階段をのぼることしかできなかった。
階段道をのぼりきったところで わかれた。
彼女はこれからどこかに行く予定があるといっていた。
しかし、
介助の人がいるわけでもなく
タクシーやバスにのるでもなく
車いすもやはり使わずに、
両腕の力だけで這っていった。