BRILLIANT CORNERS-2

観た映画・読んだ本など関心ごとへの感想メインの、なんということのなさすぎる身辺雑記帳です。 少しずつ、いろいろ更新してまいります。 お気が向いたらお読みいただければさいわいです(^O^) ブログのタイトルは、セロニアス・モンクのアルバムから。「すみずみまで光り輝く」というような意味だそうで、なんとなくいいなとおもうもんで。

宮部みゆき「クロスファイア」-180610。

先日、宮部みゆきクロスファイア」を読み返してみた。
宮部みゆきさんの作品は どれも大長編だ。昨今はなかなか手がでない。

クロスファイア[上] 宮部みゆき | 光文社文庫 | 光文社

 

クロスファイア[下] 宮部みゆき | 光文社文庫 | 光文社


読み返すと まあこんなものかというかんじもちょっとあったが
抒情的な表現が 唐突でなくしつこくもない程度にうまくさしはさまれ
(※「母のように。愛のように。」とか。
ラストシーンでも一部 くりかえされた。)
先がどうなるのか、とグイグイ読みすすめるだけでない
読書のたのしみ・・・文章をあじわう楽しみを
おもいださせてくれるところが いいような気がした。
真保裕一さんくらいになると 
ちょっとしつこすぎると感じるうえに
表現それじたいも自分がすきなセンスじゃなかったりして 
ウーン、こういうのはあんまりいらないんだがなとか つい思うのだが。

女性や、少年少女を生き生きと描く作家さんだ。

本作では淳子やちか子、信恵ちゃんがすごくよかった。
「龍は眠る」の少年ふたりや「魔術はささやく」の守、
「レベル7」の母子、「ブレイブストーリー」も少年が主人公だ。

スティーブン・キングの「ファイアスターター」に
すごく似ているところがたくさんあるけど、
超能力それじたいのすごさを描くことに
キングほどには注力していない。

ほとんどの場合、
法律の網目をかいくぐる犯罪者たちに
正義の裁きをくだすための ツールとしてのみ超能力があるので
念力発火能力はこんなことができるんだよ!
こうやって利用されていくんだよ!というのを描くSFではない。

ただ、主人公を女性にしたところと
彼女の能力が炎の力だということにしたのは うまい。
女性にすることで 巫女、シャーマン、呪術、魔性といったような
方面の連想をよぶことができているし、
炎には あしきもの、けがれたものを浄化する力があると
昔から みられてきたところがあったはずだからだ。
彼女の力のすさまじさの描写や
力をふるう淳子の胸のうちの描写にぬかりはなく
淳子にじゅうぶんに心をよせて読んでいける。
個人的にはもうすこし 
彼女が自分の能力にのみこまれていくところを
見たいような気もするし、
あと、浩一が登場してからは、どうもこの物語は
淳子にとってのハッピーエンドにはならないらしい、ということが
はっきりとわかってきてしまうので
それを知りながら読み進めるのにも つらいものがある。
彼女の炎は 彼女自身の手で鎮められつつあったのに、
他人の手で 本人ののぞまないタイミングでもみけされたように見える。
淳子は それをうけいれたが
あの状況ではそうするよりしょうがなかっただけで。

クロスファイアは十字砲火の意らしく
十字、が十字架、をおもわせて
さらに淳子のなすことが 
犯罪者たちのひそかなる制裁であることから
十字架は裁き、淳子はその執行人、で話がすすむのに
とちゅうから執行人が完全にいれかわり
十字架に磔にされる人物が淳子自身となって、いたいたしい。
淳子がたったひとり営々とうちたててきた十字架が 
圧倒的な数の力によってかんたんに叩き折られ
まあたらしい十字架に 淳子の両手両足が磔に。

牧原と一樹のぶつかりあいのシーンはいい。

本作は「燔祭」という中編の続編的位置づけらしい。
読んでいないんだけど
本作を読む限り相当 内容のぎっしりつまった物語だったみたいだ。
よくこれだけの要素を中編規模にまとめたな!と。
「燔祭」のほうもぜひこれから読んでみたい。