BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想をおもに記録しています。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

「地獄門 Gate of Hell(1953)」。

DVDで観てみた。

「地獄門」
(英題:Gate of Hell 衣笠貞之助監督、1953年、日本)

movie.walkerplus.com

 

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平治の乱前後の京を舞台にえがかれる物語。
原作は菊池寛だそうだ。

このポスタービジュアル、いいね。
左はじのコピー、意味わからないけど勢いがあっていい。
作品をまともに観ないで書いたコピーであることが
ひしひしと伝わる(笑)。

平治の乱は、平安末期の政変だ。
源義朝らが、後白河上皇・・をかつぐ平清盛一門・・
をたおして、平氏の台頭を阻もうとした。
平清盛が遠方にでかけたスキをねらっておこされたが、
しらせをうけて帰京した清盛勢にほどなくして鎮圧され、
けっきょく源氏による政権奪取ははたされず。

戦火は御所にもおよび、上皇とその妹・上西門院の身にも危険がせまる。
上西門院を逃がすのに身代わりがたてられることになり、
お付きの袈裟という女性が、その役目を買ってでた。
袈裟の車の護衛をした武士・盛遠は、美しい彼女にひとめぼれ。
論功行賞で、袈裟をめとりたいと願いでるも、
彼女は渡辺渡という御所付きの侍の妻だった。
しかし、あきらめられない盛遠はしつこく彼女にいいより、
妻にならなければ渡を殺す、と脅す。
悩みぬいたすえ、袈裟は夫婦の邸にあえて盛遠をまねきいれ、
夫の身代わりにその刃をうけて果てた。
盛遠は、自分のきもちを押し付けて恋する人を追い詰めた
身勝手を悔い、渡に自分を殺してくれと懇願。
だが渡は盛遠を手にかけることなく
なぜ夫たる自分に相談してくれなかったのかと
袈裟のなきがらをかきだいて泣く。
渡に殺してもらえなかった盛遠は、
袈裟の菩提をとむらうため、出家する。

・・・

演技がふるくさい。
録音の関係か、何をやってるのか聞き取りにくく
映像もガチャガチャしてときに状況が読めない。
セリフは重罪級に棒読み。

盛遠と兄の政治的対立の要素は
話がややこしくなるので、いらなかった。
それをけずって、もっとしっかりと
袈裟への妄執がエスカレートするさまを描いてほしかった。
実際的に会える機会が少なくても、
いや、むしろ少ないからこそムダに燃え上がる岡惚れの炎を
もっと描写してくれてよかった。

田舎ざむらいとさげすまれたという
北面武士を演じるには、長谷川一夫は品が良すぎた。
あと滑舌が悪すぎて何を言ってるのかわかりにくかった。

ただ、これら欠点という欠点の山を掘り返した底に
残って光るものはたしかにある映画だった。

カンヌでコクトーに絶賛されたというだけあり、
色彩はあざやか。
貴人の服の色柄もまじめに再現され
見入ってしまうものがあった。
音楽も個性的で美しい。

また、「地獄門」の意味をかんがえていたんだけれど。
最初は盛遠の暴走する妄念を指しているのかなとおもったのだが
それだけでもないことに気づいた。というのも、
渡が、妻の死を知って、盛遠にこんなことを言った。

「おまえはわたしに斬られて死ねば楽になれるのだろう。
だが妻に頼ってもらえなかったあげく、みすみす死なせた
わたしは、これから先どうすればいいのだ」。

袈裟が渡に窮状を相談しなかったのは
渡を信用できないからとかそういうつもりではなかったろう。
だんなさまに迷惑をかけてはいけない。
よその男に言い寄られるなんて、自分が至らないからだ。
そんなはしたない女が妻というので
だんなさまの評判が落ちたら・・・などと考え、
自力で問題を解決しようと思いつめた、そういうことのはずだ。
だが、渡も言っていたことだが、
夫としては相談してほしかった。頼ってほしかった。
世間に何を言われようとも彼だけは袈裟の味方をしたのに。
妻を守って、ストーカー化した盛遠と決闘できれば
それこそ本望だったはずだ。
なのに何ひとつ打ち明けてもらえなかったばかりか
最愛の妻の命とひきかえに自分が生き残る始末。

盛遠は袈裟の死をきっかけに出家し、罪をそそいで
煩悩からさめることもできるかもしれない。
犠牲になった袈裟も、愛する夫を守れたのだと
納得して死んでいったのだろう。
だが渡は、妻に信頼してもらえるだけの夫になれなかった、
そんな心の傷をかかえて生きていかなくてはならない。
盛遠のように出家して、妻の菩提をとむらうにしても、
妻に頼られなかった俺、というすさんだ心でする供養より
心からの改悛にもとづく盛遠のそれのほうが、
よっぽど仏の御心にかない、袈裟の霊をなぐさめるだろう。
まじめな渡はそこまで考えるのではないか。

作中に登場する山門「地獄門」は
義朝勢の首がさらされた場所であり、
乱ののち、盛遠が袈裟と再会した宿命の場所であった。
渡の殺害を企図した盛遠が、袈裟の邸にむかう途中、
琵琶法師に時刻をたずねたのも、この地獄門の下だ。

しかし出家した盛遠は、この門の前を早足でとおりすぎていった。

地獄のほうがまだましと思えるような
つきせぬ悔恨と苦悩をかかえて生きていかなくてはならなくなった。
地獄への門をくぐったのは、盛遠ではなく、渡。