BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想をおもに記録しています。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

手記-其の拾玖(仮題)-20171212-フェイドアウト

2017年12月12日 火曜日。
この日をもって出社をとりやめる手はずだ。


出社とりやめのまえにやること

<必須>
①専務と話す(録音しておく)
 ・休職の規定はどうなっている?
 ・離職票に記載される退職日はいつ?
 ・タイムカードの2017年11月27~11月30日の欄に
  手書きされていた「傷病」というメモの真意

②専務に頼む・・・就業規則書のコピーをとる

③職場の私物・・・撤収

④やらないこと・・・退職の意思を書面などで表明すること

<実行できればなお可>
⑤パソコンのログを抽出
⑥進行中の仕事・・・できうる限り進めて、先輩に申し送り
⑦メール・・・バックアップをとり完全に削除
       バックアップをとったポータブルハードディスクが
       あることを、女性の先輩にのみ伝えておく

③と⑦は11日中にすませた。
やることはまだまだたくさん、むしろ今日こそ
メインミッションがもりだくさんだ。

まずなんにしても、専務と話さなくてはいけない。

この日の午前中、ユニオンのSさんからメールがあった。
「本日、まだ出社されると思うのですが、
 もし可能でしたら、社長か専務に
 『(職場が)裁量労働制なのかどうか』を聞いてみて
 もらえませんか。
 あらかじめここについて会社のスタンスがわかっていると
 対応がしやすいです。録音もお願いします。」

わたし
「はい了解です。16時くらいに専務が出社してくると
おもうので聞いてみます。就業規則の所在と休職の扱いに
ついてもできるだけ 聞き出します。」

・・・
ただ・・・
専務はわたしの質問にちゃんと答えてくれるだろうか。
どのように質問すれば、うまく聞き出せるかなあ・・。
というのも、
Macから「ターミナル」が消えたこと
そして タイムカードの入院・自宅休養期間の欄に
「傷病」とメモされていたことが ずっと気になっていた。

まず、ターミナルはパソコンのログ抽出に必要なアプリだ。
そして、タイムカードの「傷病」は、労務まわりのことに通じている
(といっても会社経営者なら『知っていて当然』レベルではあるが。)
人でなければ、まず自然には出てこない文言に思われる。
ただ病気で休んだということなら、「病欠」あたりが妥当では?

もしターミナルの消失に専務がからんでいるとすると、
専務は労務関係の「(闇の?)処理」に精通していることになる。
ようするに、わたしが未払い賃金の請求を企図したときに
証拠としてパソコンのログを必要とするであろうことを見越して
あらかじめわたしの不在時をみはからい 
わたしのパソコンから「ターミナル」を削除した
・・・かもしれないのだ、ログの抽出を阻むために。
となると、
専務はわたしをかなり警戒しているはずだ。
わたしが就業規則書のありかや休職規定にかんして
この段階で急に わけ知り顔で問いただしたとき・・・、
はたしてちゃんと答えてくれるものだろうか。
のらりくらりとかわされそうな気がするな。
そもそも わたしはこの職場において
頭のわるい、仕事できない子キャラのレッテルが
しっかりと貼り付けられている。
わかったようなことをいきなり言い出せば
あきらかにおかしいとおもわれるだろう・・。

どう切り出そうかなあ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんなことを思案しながら
仕事を片付けているうちに、午後になった。

MP3音楽プレイヤーのPCM録音スイッチをオンにし、
チャージは十分か、録音はちゃんとできるか確認したうえで
専務に声をかけ、時間をもらった。

わたし
「(退職にかんしての)書面の提出がまだできていなくてすみません。
それに、先月のことではいろいろご迷惑をおかけしました。
じつは先月自分が1週間も休んでしまったことについて
今考えると少し 気になることがでてきたものですから
参考までにいろいろ質問させてもらえませんか。」

専務
「うんいいよ。どうしたの?」

わたし
「はい、急病がケガで仕事ができなくなったときや
連絡がとれなくなったとき、会社はその社員の処遇を
どうすることにしているのかなとおもいまして。
あのとき、わたしは意識がないまま病院に運ばれ、
しばらく会社と連絡がとりにくい状況になりました。
携帯を会社におきっぱなしにして入院してしまいましたし。
今回は、数日だったのでよかったかもしれませんが、
もしああいうことが何日も続いた場合、
どうなっていたのかなと。
病気で何日も入院して仕事に出られないようなときや、
意識がなくって本人の意思がたしかめられないとき、
一人暮らしの部屋で倒れて連絡がとれなくなったときなどは、
会社はその社員を・・・たとえばいったん休職とかいうことに
するのですか?
(うーん・・ちょっと口実としてムリがあるか・・?)」

専務
「うーん、一人暮らしの社員が家で倒れて音信不通っていう
ケースは考えたことなかったけど、
社員と連絡がとれないような状況になったら、
おれだったらまず、
その社員の保証人や実家の家族とかに連絡をとって、
安否を確認するだろうね。身元がはっきりしている人しか
採用しないのは、そういうののためだから。
病気で意識がなくて本人の意思がわからないときや、
ケガでどうしたって出社できないときなんかは、
いったん休職扱いにして、家族と相談しながら先のことを決めるよ。
うちは基本的に病気とかで休んでもその月の給与は全額出すんだけど、
さすがにずーっとそうしてるわけにもいかないって話になるからね。」

わたし
「(よかった、食いついてくれた・・)
『いったん休職扱い』にするのですね。
その場合、たとえば
『基本的に毎日1回は、本人かその家族が専務に
連絡を入れなくてはならない』みたいな、
『休職のきまり』的なものは設けているんですか?
わたしみたいに、倒れて病院に運ばれたことはわかっていても
そのあとぜんぜん連絡がとれない、
というようなことになったのは
大丈夫だったのでしょうか。
入院した夜、わたしの母が『連れて帰る』と主張したものだから、
専務は、わたしから連絡があるまで、わたしが帰宅したとおもってたと、
このまえおっしゃってましたしね。」

専務
「休職に関してそんなに厳格なルールみたいなものは
設定してなかったとおもうよ。
まあ仕事していくうえでどうしてもその人に聞かないと
わからないようなことがあったら 会社から電話して
聞かなきゃいけないだろうから、そういうとき連絡がとれるように
しておいてほしい、とは 休職者に伝えるだろうけど。」

わたし
「(設定してなかったと『おもう』、ってなんだよ)
そうなんですかー。ところで、休職とか連続欠勤についての
ことって、就業規則で定められているとおもうんですけど、
会社の就業規則書ってどこにあるんですか?
またなにか 急病やケガで出られなくなったりしたときが
怖いので、就業規則をコピーして家でよく読んで、
やすんでも会社に迷惑をかけないように備えたいんですが。」

専務
就業規則、ここにはないよ。実家のどこかにあるとおもうけど」

わたし
「(ここにはない、だと・・? 就業規則は事業所に必携、
 社員のだれもが読めないと、違法じゃなかったか・・)
あらら、社内にないんですか。見たかったのですが。」

専務
「うん、ここにはない。(キッパリ。)」

わたし
「もう少しいいですか。退職日のことなのですが・・
わたしの書類上の退職日は、仕事納めで忘年会がある
2017年12月28日でよいのですよね?
つまり、離職票に載る退職日のことですが。」

専務
「えーとね・・・うちは20日締めだから・・
いや、離職票には2018年1月20日となるはず。」

わたし
「(ことさらびっくり顔で)え、来年の1月ですか?」

専務
「来年の1月20日だよ。おふくろ(社長)からも話があったと
おもうけど、28日って締め後でしょ。だから本来は
締め前の12月20日で退職でもいいんだけど、忘年会あるし、
それに年末進行で忙しいから、できれば最後まで働いてほしい。」
「もっとも、体調も万全じゃないだろうから、
遅くでてきたり、必要なら早退したりしてもらっても
べつにいいんだけど。できればね。」
「で、締め後退職だから、本来こういうときは、21日~28日の
日割りで給与を出すんだけど、計算がめんどくさいからさ、うちは
1か月分ぜんぶ給与だすんだよ。締め後退職のときはいつもそうしてる。」
「でも、書類上の退職日は、来年の1月になるよ。だから12月28日から
来年1月20日までは有給消化ってことで。」
「でも・・・そうだったとおもうんだけど、自信ないな。
おふくろに確認して、1月20日じゃなかったら、知らせるよ。」

わたし
「(そうだろうなとおもったよ・・・)
そうなんですかー、ずいぶん手厚いのですね!
正直たすかっちゃいます(シレっと。)」
「これでかなりすっきりしました。
あ、もうひとつ聞いておいてもいいですか。
うちの職場って、労働形態としてなにを導入しているんですかね。
みなし労働時間制とか、裁量労働制とかそういうのありますよね。
定刻は決まっていますが、みんな時間通り来ないですよね~(笑)
でも、みんな、遅刻してもなにも言われてないから・・・ 
どういうシステムなのかなーとちょっと 思いまして。
裁量労働制ですか?(切り込みかたがすこし乱暴かな?)」

専務
「えーとね 毎月このくらいは残業するだろうという時間を決めて、
その分を固定残業代として払うっていう。
その分より少ない時間しか残業しなくても固定残業手当はだすけど、
その分より多く働いても、固定残業手当以上は出しませんよっていう。
こういうの なんていうんだっけ。裁量労働制だっけ?」

わたし
「(みなし労働時間制だとしたら みなし時間分を超過して残業したら
そのぶんは別途残業代支給、じゃないと違法では・・・? あと
『なんていうんだっけ』ってなんだよ。)
急に聞かれても専務だっておわかりになりませんよね(笑)。
でもこれも、就業規則書にはちゃんと書かれているんですよね?」

専務
「うん、就業規則には全部書いてあるはずだよ。」

わたし
「でも就業規則書 会社にないんでしたね(笑)」

専務
「うん、ここにはない(キッパリ。)。」

・・・・・・・・・・・


ミッション①の結果。

①専務と話す(録音しておく)
 ・休職の規定はどうなっている?
  →とくに厳しいものがあるわけではない 
   社員の状況を見て柔軟に決めているようだ
 ・離職票に記載される退職日はいつ?
  →2018年1月20日でほぼ確実
 ・タイムカードの2017年11月27~11月30日の欄に
  手書きされていた「傷病」というメモの真意
  →確認していない
 ・裁量労働制か?
  →わからない。話の内容を総合したかぎりでは
   みなし労働時間制であることはたしかのようだ。
   しかし、「固定残業手当分(および所定労働時間外分)を
   超過した分の残業代は、払わない」
   という意味のことを言っていた。
   これは考えようによってはおかしい。
   みなし労働時間制(裁量労働制もこの一種だ)の場合、
   所定労働時間(毎月このくらいは働くよね、と社内で定める時間)
   を超えた残業代については、別途支払わなくちゃいけないはずだ。
 
・・・

タイムカードに手書きされていた「傷病」という文言の意味を
確認したかったが、ここまで聞き出すのに時間がかなりかかり、
さすがにめんどうくさがられるかなとおもって、やめた。
しかし、もうあえて確認しなくてもいいかな、とも。
感触としては、専務は、どうも労務にあまり詳しくない。
就業規則書を会社に置いてない」なんて
あきらかに違法とわかる事実を
こうもきっぱり言い切ったのが なによりもの証拠だ。
なぜ「傷病」なんて専門的なワードを遣ったのかわからないが
警戒レベルをすこし引き下げてもいいような気がしてきた。
いや、素人判断は禁物か。
ターミナルがわたしのパソコンから消えたのは・・・?
これはほんとに謎だ。
いったいなんなんだろう・・・

・・・・・・・・・・・・

そのほか、本日のミッションの結果。
②専務に頼む・・・就業規則書のコピーをとる
→できなかった、なぜなら就業規則書が会社にないからだ!

④やらないこと・・・退職の意思を書面などで表明すること
→問題ない。

⑤パソコンのログを抽出
→実行したかったが、仕事が忙しすぎてできず。

⑥進行中の仕事・・・できうる限り進めて、先輩に申し送り
→実行した。

・・・・・・・・・・・・

1時間ほど残業をして退社。
タイムカードの写真を撮り、ユニオンのおふたりに送信。
おふたりには、本日をもって出社をとりやめることを報告した。

明日13日、ふたたびユニオンさんと面談を行い、
さっそく会社に 団体交渉の申し入れをする予定だ。


・・・・・・・・・・・・

ところで、
この時期のわたしは いま考えれば
一種の過集中の状態にあった。

退院→復帰後まもないころは、体調が悪く頭もまわらず
ひどくぼーっとしていて、とにかくだるかった。
しかし、G夫妻の懸命の説得と
ユニオンさんへの接触がきっかけとなり、
なにをすべきかがはっきりしてくると、
自分の頭でものが考えられるようになり、
・・たとえば専務と話しながら次の話の切り出しかたを
思案したりといったような・・いくらか複雑な思考も可能になった。

さらに、
仕事に行く前にも、退社したあとにも、予定をぎっしり詰め込んだ。
21時すぎから友人と会って何時間も話をしたり、
自習室やネットカフェなどにいって飽かず本を読んだり
何かを書いたり、そんなことを連日やっていた。

食事をとらずとも、夜眠らずともまったく疲れを感じず、
夜更けても朝がきても、「次」のことを考えていた。

出社をとりやめて、団体交渉の準備を始めてからは、
都内の図書館・・・とくに国会図書館
朝から晩まで通い詰めるようになった。
自分と同じようなケースで 会社と闘って
勝ったとか負けたとかいった・・・
労働審判判例記録が ないかなと考えたのだ。
国会図書館では、だれでも、国内の民事・刑事裁判の
判例記録を探して読むことができる。

とにかく動き、考えに考えた。
それによって、ほんとうにいやなことを
心から追い出そうとしていたと感じる。
ほんとうにいやなこととは、
上司の恫喝の記憶だった。
わたしはもうあれを 思い出すのがいやだった。
なにしろイヤでも思い出す。そうしてひどいと倒れる。
失神して倒れるとあっちこっち体をぶっつけて痛いし、
なにより、あのつらかった日々のことを
あたかも今このときのことかのように
追体験させられるのが イヤでイヤでしょうがなかった。
べつのことを考え続けてさえいれば、あの記憶が、
ほかのことを考えているという事実に免じて
わたしのことをほうっておいてくれるような 気がしていた。