ベネデッティ・ミケランジェリ、
自分のコンディションとか環境がどうであれ、
彼の演奏はすき。
還りたくなる演奏家。
録音の残りかたは、移り気で散漫。
あったりなかったり
録ってたり録ってなかったり
そろってたりバラバラだったり
そして異常といってもいいほど
せまいレパートリー。
そんなところがまた らしいというか、
気にしいで神経質で完璧主義なくせに
ポヤ~ンとした印象で すきだが・・。
ドビュッシーの前奏曲集
(第1集、第2集でひとそろい)も
第1集は容易に入手できたけど、
第2集が、みつかりにくいという
よくわからないことがおこり、
困らされたことをおぼえている。
これは第1集、78年の演奏だそう。
CDもっているんだが(下のリンクのもの)
オフィシャルかな、これ。
なんとなくあやしい。
ミケランジェリは
海賊版も多かったときく。
かつて動画共有サイトで
このラヴェルの
ピアノコンチェルトの演奏動画に
初めて触れたときには、うちのめされた。
会社で徹夜した日に
もう自分以外にだれもいないんだからと
ヘッドホンをはずし、
洪水のような大音量でこの曲を聴きながら
仕事をしたことをおもいだす。
オーケストラは
微妙・・・といったところか。
しかし、グルーヴ感みたいなものと、
指揮者がミケランジェリによせる信頼、
まんざらでもないミケランジェリ、
そんなかんじのことが
あたたかく伝わる演奏なのが、良い。
スピード感もこのくらいがちょうどいい。
ピッコロとトランペットが
ギリギリのラインで
ふんばっててかわいらしい(^^)
もっとメジャーなオケでも、
もっと退屈で、
戦意の感じられない演奏をしている盤を
いくらでも聴いたことがある。
ミケランジェリのピアノの音は
こんなにやる気なさそうに弾いてるのに
どこまでもすきとおって、
ここちよく冷たい。
でも硬さや重さとは無縁、
するするとのびて、
うつくしい。
ただ この動画は
彼の晩年のものとみられる。
たしか90年代の中ごろ亡くなったはずで、
90年代初頭のコンサートが
最後になった と聞いてる。
この動画は 82年とある。
すばらしい演奏で
わたしはすきだが
彼の若いころの演奏を聴くと
音のハリが・・・残酷なほど
あきらかにちがう。
もっとはずんでいて、キレを感じる。
さきにのべた ドビュッシーの前奏曲で、
60年代の演奏動画があった。
粒のそろった
硬質な音色がめだちます。
ルバートをあまり
意識してないかんじだろうか。
若いころは
いくらか意欲的なアクションで
弾いているようにみえる。
78年の同曲の動画でも
82年の ラヴェルの動画でも、
こんなふうに前傾姿勢で
弾く姿なんて 見られない。
晩年にいたり体はどうしても弱るので
ハリのある音や疾走感を
前面に押し出すことは
むずかしくなった一方で、
むしろ力は いいかんじに抜け、
どこまでも広がり のびやかに歌う演奏を
獲得していったのだろうと。