BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

『アルスラーン戦記』8巻~ラジェンドラ礼賛-171208。

あんまり考えないようにしてはいるが、
つくづく 疲れた(^^)
みんなやっていることだから、
みんなおなじ条件だから、
・・・そりゃいわれなくてもわかってる。
けど、そういうのをいくら わかったところで、
自分が疲れているという事実が 消えるわけじゃない(^^)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コミカライズ版『アルスラーン戦記』の
8巻がでているのを書店でみたので
購入して読んでみた。
マンガを買うことじたい すごく久しぶりだ。

f:id:york8188:20171208002142j:plain

 

kc.kodansha.co.jp


パルス王国の王太子アルスラーン
その側近たちが
隣国シンドゥラにとびこんでいく
シンドゥラ遠征編がまもなく完結するところ。

シンドゥラという外国とのかかわりによって
パルスのかかえる問題や
アルスラーンの葛藤が
浮き彫りにされていくのが
この遠征編のおもしろいところだ。
すなわち
アルスラーンラジェンドラ王子、
アルスラーンとガーデーヴィ王子、
アルスラーンジャスワント
バフマンとマヘーンドラ、
ダリューンとマヘーンドラ、
ダリューンジャスワントなどなどの
対比構造。

マンガならではの描きかたで
ものすごくよく表現されていた。

神前決闘もみごとに描かれていた。
アルスラーンが、ダリューンを案じるあまり取り乱して
彼にもしものことがあったら・・・、と 
ラジェンドラ王子にすごむシーンは
迫力にみちてよかった。

わたしはアルスラーン戦記の登場人物のなかでも
シンドゥラ国のラジェンドラ王子がけっこうすきだ。
脇役なのだがとっても良いキャラクターだ。
コミカライズ版は
ラジェンドラの個性がすごくよく出ていて
いつも感心させられる。

ルックスも 人間性がにじみ出ていていい。
わたしは、原作小説で、活字だけで
アルスラーン戦記」を読んでいたときは、
ラジェンドラのルックスは 
俳優のデイヴ・パテルのイメージでいた。
シンドゥラ国のモデルがあきらかにインドなので、
インドの男性というとわたしのなかではデイヴ・パテルだから
何となくそのイメージを作り上げていたんだと思う。
それだけにコミカライズ版のラジェンドラを初めて見たとき、
「あ、こういうかんじ?」と一瞬だけ 意外に思った。
だが、「イヤ でも、これもいい!」とすぐに受容できた。
がっしりとして動物的で、良くも悪くもしぶとそう。
あけっぴろげで悪びれず、健康的にずるがしこい。
表情も言うこともくるくる変わって、やや鼻もちならないが、
でもいつもなんだか楽しげで、気持ちに余裕があるのが良い。
彼が登場すると場面の雰囲気がパッと明るくなるのだ。

それに、ラジェンドラはあれで仕事もけっこうできる。
アルスラーン(と彼の側近)の能力が並外れているから、
ラジェンドラの優秀さがかすんで見えてしまうのだが
用兵もなかなかうまいし、
けっこう周りが良く見えている。
民衆に好かれるのも指導者としては大事な資質だろう。
もしもアルスラーンたちがいない世界観で、
シンドゥラ国が主役の物語だったなら、
名君・・・というか愛すべき 国民的英雄として
描かれるはずの男だ。

この8巻で、ラジェンドラは、
シンドゥラ国の新国王の座に就いた。

彼はこれまで次期国王の座をめぐって 
異母兄であるガーデーヴィ王子との
決戦にのぞんできたわけなのだが
一時、劣勢においこまれた。
いつも強気で自信家のラジェンドラも、
さすがにこの時はちょっとめげそうになり
どこかから援軍でも来てくれればなあ・・・とか
夢みたいなことを考えてしまう。
そこではっと我にかえり
俺も焼きがまわったもんだ、と
自嘲する場面は悪くなかった。
彼がこのようにひとりごちるとき、
部下たちの誰ひとりとして、
彼の内心の思いにきづいている者はなかった。
大勢の部下を従えていても、
本質的に孤独である、ということだ。
ラジェンドラ
「おい! 何か起死回生の策はないのか!」
などと部下に甘えない。
そこが良いと 思った。
ラジェンドラ個人の戦闘能力、
軍の最高司令官としての手腕がどの程度なのかは
はっきりわからない。けど、
すくなくとも彼は ことを他人任せにしない。
物見役が重大な報告をしてくれば、
自力で物見やぐらをよじ登り、その目で状況を確認する。
戦争に臨む部下たちを鼓舞するために投げかける
「奴隷の子でも王になれるということを見せてやる!」
というセリフも、
彼がリーダーとしてかなり優秀であることを、
示しているとわたしは思う。
最高に優秀ではないかもしれないが、かなり優秀だ。
「俺がおまえたちに見せてやる」だ。
「おまえたちが、奴隷の子である俺を王にしろ」ではない。
ラジェンドラは、自分が何もしなくても
まわりがやってくれるのさ、なんて思っていない。
自分の下にはたくさん人がつきしたがっていても 
自分と同じ高さのところには誰もいないということも、
本質的なところで案外理解している。
王たる者は独りなのだということを。
そしてそうしたことを受け止める胆力を備えてもいる。

異母兄ガーデーヴィには、ない。
ここまで何もないのもかわいそうだなってくらい何もない。
あったのは「血筋の良さ」と
過ぎた腹心マヘーンドラだけだった。

ガーデーヴィの処遇を寛大に、との
父の遺言を聞くラジェンドラ
本当なら兄なんて今すぐ殺してやりたいところだが 
他ならぬ父上の頼みだからなあ・・・、
弱り切る表情がかわいらしくてよかった。
この父、人としては好人物だが、王としては失格だろう。
兄弟どちらに王位を譲るか、
事前にしっかり意思を表明しなかったから
国が乱れることとなり、
結局 兄弟を殺し合わせる事態を招いた。
規律にもとることをした者は、それが誰であろうと
厳しく処断しなければいけないのに、
息子だからとそれができないのもダメなところだ。
ラジェンドラの決断は間違っていない、とわたしは思う。

わたしはラジェンドラがけっこう好きで、
高く買っている。
ラジェンドラには
これからも思う存分いいたいことを言い 
やりたいことをやって暴れまくってほしい。
こういう男が暴れてこそ 
パルスの対外政策のサブストーリーが盛り上がる。