BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

「ダンケルク Dunkirk(2017)」3回め。

ダンケルク
Dunkirk クリストファー・ノーラン監督
2017年、英・米・仏・和蘭

movie.walkerplus.com

 

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午後から予定があったから
ものすごいムリな早起きをし 
低血圧と頭痛のなか 3回めを観てきた。
3回めでも少しも飽きない。
衝撃は薄れない。
むしろ飽きたその先に見えるものが早く見たい。
飽きるまで何度でも観たい。
よくよくふりかえると
観ているあいだ なんの言葉もおもいうかんでない。
自分がどんなふうに 身じろぎをして
いつ足を組み替えているかとか わからない。
すくなくとも自覚できるかぎりでは
やばいくらい無心にちかい状態で 観てる。


だが
3回めにしてトム・ハーディが出てることに気づいた。
出る映画出る映画 ぜんぶ顔がちがう気がする あの人!
隊長の声がたぶんマイケル・ケインであることにも
3回めでようやく気づいた。
キリアン・マーフィの眼があいかわらず美しい。
どうしてもあの眼の青色、見せたいね、監督!
キリアンの役どころがどうも謎。
考えればわかることのような気もするから考えてみたい。
エンドクレジットとかに答えがあったりするんだろうか。
つぎはオペラグラスを持って行って 
細かい字に目をこらしてみたい。


わたしはすっかりこの映画に恋をしてる。


戦争を描くというのではなく サバイバルを、
生き残ろうとする行為そのものを描こうと
しているところが ほかの戦争映画とかなり違うようにおもう。

キャスト自身、「自分が生き残れる役なのかどうなのか」を
わかってないで演じているのでは、とおもわせるくらい
残酷で、かつ うすらさむいほどリアリスティックだ。
登場人物が、
「自分は最後まで死にませんよ」
「ぼくはこの次の爆撃にふきとばされて死にます」
といったように
自分の結末をわかっている。ってことが、
観客にバレてしまう物語ってのは もちろんいけない。
台本があるのだから 役者は自分の役がどうなるのか
わかっていてあたりまえなのだが、
役者がわかっていても、
物語の登場人物たちが ちゃんと 自分の未来が
わかってなく見えるように
演じられてるかどうかということ。

ダイ・ハードマクレーン刑事が
殺しても死なない男であることをわかっているのは
観客だけでなくてはならない、のとおなじで、
その逆もまたしかりであるとおもう。


リアルだ。
でもちゃんとフィクションで
ちゃんと最終的には物語だ。
ちょっと 古い英国文学・・・バイロンみたいな 
ああいうのを感じさせるような 
きどったセリフとか ふいに入れてくる。
セリフがほとんどないうえに 
ほぼ飾りっけもへったくれもない業務連絡ばかりのため
そういうセリフだけ はっきり浮いて聞こえるのだ。

「いやあ、物語なんですう。すいませんねえ(^^)」。

耳元でささやかれて一瞬正気にかえりかける
そこまで含めて 
わたしは監督の てのひらのうえだ。


血があまり描かれない。
状況的にはちょっとした湖ができるくらい流されているはず。
流血シーンのたび バカ正直に「赤」を出してたら
画面にまんべんなく色彩がでてしまうから
血はもういいや、と、避けたのかなとおもう。
色彩をだしたかったのであろうポイントが明確に用意されてて、
だからこそ 痛みをともなうほど効いてる。


それは音楽も。
あの音楽。
時限装置みたいな時計の音。