BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

こんなような本はどうですかね。-170103。

まえに、友だちが
読書ビギナーむけに
おすすめの本を教えて、と
いってきたことがあり、
それに応じて書いてみたところ、
ずいぶん多くのかたから
好評をいただいた。
このまえ、また別の方面から
にたようなリクエストがあった。
ここでふたたび 
本の紹介的なことをやってみる。

まともな準備はできなかった。
本棚を整理するのが大変だから。
でも、2016年に
何の本を読んだか、については
記録を残しており、正確にわかる。
そこで旧年中に読んだ本のなかから
よさげに思えたものを
以下に紹介してみた。

いっっぱいあるが
ぜんぶ挙げることはできないから
基準をもうけた。

・「読書入門」にはこだわらない。
「似たような本ばかり選んでしまうので
たまには毛色のちがった本から
刺激を受けてみたい」
とおもっている人、を想定。
・マンガを含む。
・原則1冊500ページ以内。
・文庫かコミックスで読める。
・今 書店に行けば買える。
・具体的なストーリーがある。
・日本語で読める。
・著者存命~死後50年以内。
・詩集と歌集はのぞく。

カテゴリはこう。
・感動、ぐっとくる、考えさせられる
・笑う、ニヤニヤできる、あったかい気持ちになる
・びっくりする、わくわくする、新しい世界が知れる

1冊単位の本の長さ 本の重さが
だいたいわかるようにした。
★★ 荷物を整理すればカバンに入る。
★ うすい文庫本、コミックス。


・・・


■感動、ぐっとくる、考えさせられる

永い言い訳 ★
(ながいいいわけ 西川美和著、文春文庫)
→小説。
主人公の男性が、
妻を旅先の交通事故で亡くす。
といっても留守番していた彼は
妻が大変なことになってたそのとき 
不倫相手を自宅に連れこんで
いちゃいちゃしてた。
夫婦関係はすでにひえきっており
妻の死を知っても これといって
主人公の心は動かない。
しかし彼は
ある出会いをとおして、
永遠に失われた妻との関係や
ザツにあつかってきた自分自身の人生と、
向き合っていくことになる。
やさしさと苦い痛みとにみちた、
二度とは読むのがつらい物語。
著者自身の手で、映画化もされた。

文春文庫『永い言い訳』西川美和 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS



リリーのすべて ★★
(りりーのすべて 
デイヴィッド・エバーショフ著、ハヤカワ文庫)
→海外文学。
1925年頃のデンマーク
アイナーとゲルダは仲のよい夫婦。
アイナーは、あることをきっかけに
自分の心のなかにひそむ
「女性」に気づき、
女性の姿で、「リリー」として
生きることを望むようになる。
夫の変化に当初はおどろいたゲルダも、
最終的には彼を献身的に支える。
やがてアイナー/リリーは、
世界初といわれる性別適合手術
受ける決意をするが・・・。
愛とか理解とかそういう
簡単な話ではない。
心と心の 
すれちがいとつながりの物語だ。
ラストシーンが美しい。
映画化もされた。

リリーのすべて | 種類,ハヤカワ文庫NV | ハヤカワ・オンライン


説得 エホバの証人と輸血拒否事件 ★★
(せっとく えほばのしょうにんとゆけつきょひじけん
大泉実成著、草思社文庫)
→ノンフィクション。
昔のものだが、色あせない。
男の子が交通事故で重傷をおい
病院に搬送された。
輸血をしないと、きびしい。
しかし、両親は輸血を拒む。
彼らが信仰する宗教団体
「(通称)エホバの証人」では、
輸血が禁じられているからだ。
男の子は死亡した。
この件をニュースで知った著者は、
情報を分析するうちに生じた 
あるひとつの疑問を胸に、
エホバの証人」に
じっさいに入信(潜入)、
死んだ子の両親に接近する。
・・・
一般的なノンフィクションとちがって
軽い文章で読みやすい。

説得 エホバの証人と輸血拒否事件 | 文芸社文庫 草思社文庫


裁かれた命 死刑囚から届いた手紙  ★★
(さばかれたいのち しけいしゅうからとどいたてがみ
堀川惠子著、講談社文庫)
→ノンフィクション。
強盗殺人で死刑判決を受けた青年が
弁護を担当してくれた国選弁護人と
自分に死刑を求刑した検察官とに
死刑が執行されるまで何通も 
熱心に手紙を送っていた。
弁護人に礼の手紙を送るのはわかる。
でも検察官にまで
心のこもった熱い内容の手紙を送るなんて
どういうことなのか。
著者は別件でこの検察官に取材したとき
手紙の件をうちあけられ
青年の人生をたどってみることにする。
その結果あきらかになってきたのは、
ある重く哀しい事実。
・・・この本を読んで受けた感動は、
心よりも体に、じかにきた。

『裁かれた命 死刑囚から届いた手紙』(堀川惠子):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部



蝦蟇の油―自伝のようなもの ★★
(がまのあぶら じでんのようなもの 黒澤明著、岩波現代文庫
→映画監督・黒澤明の自伝的エッセイ。
優秀な表現者
文章もやっぱりすごくうまい。
わたしは本作を読んで
黒澤明氏のことが
大・大・大好きになった。
古い本だがぜひご一読を。

蝦蟇の油 - 岩波書店

 

 

エムブリヲ奇譚 ★
(えむぶりをきたん 山白朝子著、角川文庫)
→連作短編集。
旅本作家の和泉蝋庵と、
荷物持ちの耳彦の奇妙な道中記。
和泉蝋庵は変な人で、
旅に出ると必ず道に迷う
・・・というか、
異世界的なところに迷い込んでしまう。
美しく酷薄で、また、
どこか哀しい物語集だ。

エムブリヲ奇譚: 文庫: 山白朝子 | KADOKAWA-角川書店・角川グループ

 

 

モブサイコ100  ★
(もぶさいこ100 ONE作、既刊13巻、裏少年サンデーコミックス)
WEBマンガ
男子中学生・茂夫(しげお、モブ)は、
強力な超能力者。
でも、彼は超能力なんて
すこしも人生の役にたたないと考えている。
そんな力なんかいくらあっても、
自分は勉強も運動も苦手だし、
好きな女子に声をかける
勇気すらない男だからだ。
モブは さえない自分を変えるため、
学校の「肉体改造部」に入部。
先輩や仲間たちとともに
レーニングに励むようになる。
しかしそんな折、
モブの超能力を私利私欲のために
利用しようとする者たちがあらわれて・・・。
とりあえずそうだな
コミックスで3巻あたりまで
だまされたとおもって読んでみて。
人の生の感情がぎらついてて 
不覚にも泣けるのだ(^^)

裏サンデー | モブサイコ100

裏サンデー | コミックス情報




直面(ヒタメン) 三島由紀夫若き日の恋 ★★
(ひためん みしまゆきおわかきひのこい 岩下尚史著、文春文庫)
→ノンフィクション。
金閣寺」執筆前後、
三島由紀夫作家として
ノリにノッていたころ、
彼の愛情を一身にうけた、女性がいた。
彼女はけっきょく三島とは
べつの男性にとついだので
婚家や周辺の人物をはばかり
三島の死後も、
過去のことをすすんで話してはこなかった。
しかし、
夫も関係者も亡くなったいま、
自分の話がなにかの役にたつならと、
著者に 若かりしころの
三島との恋のおもいでをうちあける。
・・・この回顧録の興味深さについては
いうまでもないが
彼女と三島とのデートのエピソードから
戦後復興期の新橋・赤坂・銀座の
花街界隈の雰囲気が
つたわってくるところも、すばらしい。
また、
三島由紀夫という人物については
じつにいろいろ・・・
いろいろと、いわれてきたわけだが
本書はそれらを・・・
もののみごとに蹴散らす傑作だ。
それは、もちろん、
「女性と、肉体関係こみの
交際をしたのだから
三島はゲイじゃなかったんだよ」
とかそんな低次元なレベルでの
蹴散らしかたではない。
そういう話じゃない。
読めばわかる。
おおくの人にとって、おそらく
三島のイメージが激変する一冊。

文春文庫『直面(ヒタメン)三島由紀夫若き日の恋』岩下尚史 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

 

・・・

 

■笑う、ニヤニヤできる、あったかい気持ちになる
二重生活  ★
(にじゅうせいかつ 小池真理子著、角川文庫)
→小説。
主人公は哲学専攻の女子学生。
彼女は教授のすすめから、
ご近所の、妻子ある男性を対象に
「哲学的尾行」を始める。
彼のことが好きとかいうわけじゃなく、
金もうけが狙いでもない。
ただ目的もなく、尾行するのだ。
結果、男性が
妻以外の女性と深い関係に
あることが判明するのだが・・・。
「こういうことをすると
最終的にどうなるのか?」が
容赦なく、つきつめて描かれていて、
わくわくさせられた。
こんな気持ちになってよい小説だったのか
わからないのだが、
読み終えたとき、なにか、
ほくほくしたような、いい気分になった。

二重生活: 文庫: 小池真理子 | KADOKAWA-角川書店・角川グループ




貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 ★
(きさまいつまでじょしでいるつもりだもんだい 
ジェーン・スー著、幻冬舎文庫
→エッセイか。
著者が、バリバリ働く40代独身女性の立場から
女性にまつわるさまざまな問題・・・
たとえば「女子」という呼称問題、
「(なんでもかんでも)カワイイ~♪」問題、
そして女性にとっての
恋愛、結婚、家族、老後などなど
を ばっさばっさと斬っていく。
貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 | 株式会社 幻冬舎

・・・

■びっくりする、わくわくする、新しい世界が知れる
ゴールデンカムイ ★★
(ごーるでんかむい、野田サトル作、既刊9巻、
ヤングジャンプコミックス)
→マンガ。サバイバルアクション。
明治時代末期の北海道が舞台。
主人公は杉元佐一。
日露戦争
「不死身の杉元」の異名をとった、
強運かつ屈強な人物だ。
杉元は、
アイヌの男たちが秘蔵していたという
莫大な宝物のうわさを耳にする。
宝はある男に奪われ、
その男はやがて当局に逮捕されたが、
獄中で、同房の囚人たちに
宝のありかを示す暗号を託したとか。
そして、その囚人どもが脱獄した・・・
杉元は、ある深刻な事情から、
一攫千金を熱望している。
脱獄囚たちを捕まえて暗号を暴き、
宝物にたどりついてやろうと決意する彼。
しかし、杉元以外にも
宝を狙っている者はたくさんいる。
ライバルとの闘いを勝ち抜いて
宝を獲得することができるのか? 
・・・という物語だ。
杉元は、北海道の山中で
聡明なアイヌの少女・アシㇼパと出会い、
協力関係を結ぶ。
彼女が伝授する
アイヌの生活の知恵の数々、
また、山中で遭遇する
獰猛な野生動物との死闘は、
ときに本筋の
トレジャーハント・パートよりも 
はるかにおもしろい。
むしろ
宝探しはいっそどうでもいいから、
杉元とアシㇼパのサバイバルを
ずっと見ていたい・・・とおもうくらいだ。
杉元とアシㇼパが好きだから
人間同士の 金をめぐる 
みにくい争いで 
死んだりしてほしくないし(^^)
おもしろいので、読んでみて。
ところで本作の監修を担当している
中川裕氏は
アイヌ語アイヌ文化についての
論文や本をいろいろ発表している。
アイヌの物語世界」はわたしも読んだ。
おもしろかった。

『ゴールデンカムイ』公式サイト│集英社

アイヌの物語世界 - 平凡社



ふしぎの国のバード ★★
(ふしぎのくにのばーど 佐々大河作、既刊3巻、ビームコミックス)
→マンガ。
もっと高く評価されるべき。
実在の英国人旅行家イザベラ・バードの物語。
異国の地を多数制覇してきたイザベラは、
時代の変化とともに消え行く
日本文化を記録に残すため、
東京から蝦夷(北海道)まで
前人未到の縦断ルートを進む。
実際、イザベラは1878年に訪日
通訳の伊藤鶴吉を連れたほかは 
ほぼ単独で東京~北海道間を旅し
「日本奥地紀行」などを発表した。
本作の作者はこれが初めての
マンガ作品みたいだが
渡辺京二氏の「逝きし世の面影」に感動して
本作を描くことにしたそうだ。
「逝きし世の面影」は
まぎれもなく、名著だ。
明治初頭の日本には 
欧州をはじめとするたくさんの国から
各界の専門家や学者がやってきた。
彼らはみんな 
やれ日本は自然も街並みも美しい
やれ日本人は親切で礼儀正しい、
まずしいけれど清廉だ・・・などと
当時の日本へのおしみなき賛辞を
のこしている。
のちに日本人が昔の日本のことを
研究するにあたって
これらの外国人たちの「日本礼賛」は 
ほぼ黙殺されてきた。
彼らは ほめすぎだ、
そのまま信用はできない、と。
でも、
「たしかにほめすぎかもしれないが
これもまた一面での真実、そこから
かつての日本の姿がみえるかも」と
当時の訪日外国人の声を
まじめに再評価した人がいた。
それが歴史家・評論家の渡辺京二氏で
彼が著したのが「逝きし世の面影」。
この本において渡辺氏は 
おもに幕末から明治期に日本にやってきた
各界の専門家や知識人たちの
著書、手記を多数引用している。
そのなかに、
くだんのイザベラ・バード
日本奥地紀行」もふくまれてるわけだ。
イザベラはズバズバものをいう人で
盲目的に日本や日本のひとびとを
ほめちぎったりはせず
「どこそこは、たいした場所ではない」
「田舎の日本人は原始人みたい」
とか書いているところもあるが。
・・・話は それまくったが
「ふしぎの国のバード」と
逝きし世の面影」の関係はそういうこと。
さて、「ふしぎの国のバード」は 
画は成長途上だが 熱意がつたわる。
なんといっても 
本作でたのしめるのは
イザベラが驚いたり感心したりすることに
わたしも驚いたり感心したりできる、
ということだ。
どういうことかというと
本作は 100年以上前とはいえ
まぎれもなく母国の姿を描く物語なのだ。
それなのに 現代の視点からみると
もう、ほんとにいろんなことが
今とはまったくちがう。
新鮮な発見がもりだくさん。
イザベラ同様にびっくりしたり
感心したりしちゃう。そこが
このマンガのおもしろいところ。
・・・また、何度もいうように、
画はうまいとはいえないのだが、
それでも
誇り高く好奇心旺盛なイザベラ、
無愛想でひねてるが、デキる通訳・伊藤鶴吉
・・・と キャラがくっきりと 
よく表現されてて、読んでいて
とてもたのしい。
「ふしぎの国のバード」からはいって、
気が向いたら
「逝きし世の面影」「日本奥地紀行」にも
トライしてみるといいかも。
というか きっと そうしたくなる。

ふしぎの国のバード 1巻 | コミック | ビームコミックス | エンターブレイン

逝きし世の面影 - 平凡社

日本奥地紀行 - 平凡社




クリーピー ★★
(くりーぴー 前川裕著、光文社文庫
→小説。サスペンスホラー。
主人公は、大学で犯罪心理学を教えている。
一軒家に妻と二人暮らし。
知り合いの刑事・野上から
とある事件の分析を
たのまれたのをきっかけに、
なぜか主人公の周囲でも、
不可解な事件が頻発するようになる。
野上の失踪、
大学の教え子同士のトラブル、
向かいの家の不審火と、
そこから発見された謎の焼死体。
しまいには隣の家の娘さんが
助けをもとめてくる。彼女がいうには
「うちにいる男は、お父さんじゃない」。
いったいどういうことなのか? 
なにが起こっているというのか?
そして主人公のもとに、
お隣さんの脅威がしのびよる。
・・・いっておくが本作は、
何度も繰り返し楽しめるたぐいじゃない。
1回読み終えたらおわりだ。
また、冷静にかんがえると
終盤はややザツすぎた(読めばわかる)。
しかし、旧年中に読んだ小説では
正直 突出しておもしろかった。
わたしは本作を読んですっかり怖くなり
いまだに 家の施錠を
超厳重にするクセがぬけない。

クリーピー 前川裕 | 光文社文庫 | 光文社

 


青春漂流 ★
(せいしゅんひょうりゅう、立花隆著、講談社文庫)
→インタビュー集。
挫折を体験したのち
おおきなリスクを覚悟しながらも 
大胆に方向転換した若者たち11人と 
著者が語り合う。
基本的に
「人生は長いから、その大胆な方向転換が
正しかったのかどうかは、今はわからない」
ということにされてはいるが、
登場する若者たちはなんと
田崎真也(ソムリエ)、宮崎学(写真家)、
村崎太郎(猿回し師)、吉野金次(ミキサー)
などなど、全員がいまにいたるまで
本書に登場したときの職業のまま、
その筋のスペシャリストとなって
活躍してます。
猛禽類、とくにタカがすきなわたしは
鷹匠松原英俊さんのところなどが
おもしろかった。
宮崎学さんのところも 
こん詰めて働きすぎて
体をこわした話などに共感。
発表から30年が経過している本書だが 
立花隆氏のかずある著作でも
いまだ不動の人気をほこっているそうだ。

『青春漂流』(立花隆):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部




・・・

これですっかり伝えたとか
おもっているわけでは
ぜんぜんないが
まあがんばって書いた。

ふしぎの国のバード
ひいきしすぎだな笑

ま、もしもなにか また 
こういう路線で紹介してみてとか
もっとこういうことが知りたいとかあったら
いってもらえるとすごくうれしい。
だれかの役にたつといいなと願ってる。