BRILLIANT CORNERS-2

観た映画・読んだ本など関心ごとへの感想メインの、なんということのなさすぎる身辺雑記帳です。 少しずつ、いろいろ更新してまいります。 お気が向いたらお読みいただければさいわいです(^O^) ブログのタイトルは、セロニアス・モンクのアルバムから。「すみずみまで光り輝く」というような意味だそうで、なんとなくいいなとおもうもんで。

「カルトか宗教か」。

竹下節子「カルトか宗教か」(文春新書)

www.amazon.co.jp

(税抜き660円くらい)
 

 

 
人がカルトにひかれていくときの心の動きや、実際にハマってしまったときの脱出のしかた、カルトと対決するにあたって伝統的宗教がどんな役割をになうべきかなどを教えてくれる本。
 
この本を、なにが知りたいがために読むことにしたのか、忘れてしまったのだが(忘れんなよ!)、
自分が知りたいとおもっていたこととはまったく別の、しかも期待以上のものを与えてくれた本だった。
まーご興味があるかたは自分でぜひとも読んでみてほしいのだが・・・
わたしが あーこの本を読んで「おもしろいな」「読んでよかったな」と感じた部分を以下にあげると
 
まず、
ヨーロッパ、とくにフランスは、カルトとの闘いに関してベテランである。日本がいま体験している宗教文化的なできごとを、200~300年くらいまえに通過してきている。それからずっとカルトと向き合っているから、ベテランなのである。どういうことか?ということをかなり詳しく教えてくれた。いろんな考え方があるもんだ。歴史ってのは切り口によってほんとにいろんなものが見えるもんだ。
 
次に、
ではそのフランスでは、現在、どんなふうにカルトのみなさんと向き合っているのか。また、伝統的宗教(とくにキリスト教)のみなさんがその場にどうからんでいるのかを参考にしながら、日本でのカルトとの闘いかたを提示してくれていた。
本家キリスト教の人にとってみれば、無認可の亜種がポコポコ生まれて自分はメシアですとか言っちゃってる人とかもいて、たまったもんじゃないよ、と言いたいところなんだろうが、「認めない、でも排斥もしない、対話をみずから申し出、門戸は常に開く。」というスタンスを保持しているそうで。
そこからいくと、日本ではたとえばオウム真理教の人たちが街に施設を建てようとすると、「オウムは出ていけ!」なんて反対運動が起こるが、(そりゃ心情としては当然だが。)これはただ忌み嫌い排斥してるだけで、対話も理解も試みてないということに。
ただこわがって排斥するだけ、というやりかたでは、「友だちや家族がカルトにはまり、出てこなくなっちゃったのを、取り返したい。脱退させたい。」というときに困る。たとえどんなにみょうちくりんなグループにみえても、そこに入りたいとおもうだけのファクターが、その団体に、または外の世界にあったから入ったのであり、ダメだダメだの一点張りは、少なくともいまの彼・彼女には通用しない。では、そんな彼・彼女をやっぱり取り返したい場合、どうしたらいいのか?
その点について解説する「カルトの見分け方」の章に、とても心に残った一節があった。
いわく「実際のところ、夫婦や親子のような近い関係にあった誰かがラディカルに新しい生活を選んでしまったら、残った方が以前とまったく同じ生活を営むことはもはやできない」。
でも、「一時の別れはあっても人生は続いているし、先がある。その『先』の部分でもう一度出会うことも可能なのだ。長い間カルトにかかわっていた人は、普通の生活に戻ったときに、そこのテンションが低いと方向を見失ってしまう。迎える方も、以前のままではなくて、試練の中で成長し強く大きくなっているのが望ましい」。
 
また、
国連世界保健機関(WHO)では、「健康とはなにか」についての再考がおこなわれていて、WHO憲章の「人の健康の条件」の改正案にあらたに「霊性(spiritual)の健康」が追加された。って知ってた!?
わたし知らなかった!
WHOは「どこも病気じゃないから健康かといったらそうじゃない。逆に、病気だからって不健康ということにもならない。あなた自身を世界にむけてポジティブに発信し、世界から積極的にもなにかを受け取り、それを幸せだと感じられる状態が健康なのだ。」という考えなんだって(意訳)。
この「霊性の健康」、世界と関係しあうことを幸せだとおもう という点が、カルトのシステムからは抜け落ちている場合が多い、ということだった。
なにをいってるんだおまえは。と思うかもしれないが、そう思うあなたにこそ本書を読んでみてもらいたい。
 
そして、
「特別な修行・呼吸法をがんばって、不滅の肉体を手に入れよう!」「霊魂のステージを上げてさらに進化した特別な存在になろう!」とかいうのを提供してくるかたがたについて、著者は「生命の進化とは、退化とはそもなんぞや」というところから、ていねいに語り起こしてくれる。
この本でそのような話が読めるとはぜんぜん思っていなかったから意外だったうえに、しかもその部分は、まさかの本書における圧巻であった。
科学って、実は精緻かつ深遠で、しかもすごくロマンチックなんだわな。カルトのみなさんが、お金もうけのためにあっちこっちのなんやかんやな思想を切り張りして作ったような教義は、内容がどうにも性急で浅くって、早い話がザツなのだ。
 
一部のカルトを名指しで非難するような本ではなく(例として実在の団体をあげることはあったが。)、おもに海外の例をあげながら、日本ではどうしたらいいかを 個別レベルにまで落とし込んで解説を試みる内容であった。
 
おしまいに、
なぜだか、読み終えたときにあったかい優しいきもちになれる本だった。よし、あしたもがんばろう!と思える。たいへんに心に迫るので ぜひ多くのかたに読んでみていただきたい。