BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

就職支援センター/映画の感想-『屋根の上のバイオリン弾き』-121010。

就職支援センターのおねえさんと面談。


書類選考がある会社を3社受けるので
職務経歴書を添削してもらった。
まだまだ内容的に全然だめだなあ・・
つい長くなってしまって、
これじゃあ先方が、
読むのめんどくさかろう。
そしてそのわりに自分の特質とかが
あまり明確にPRできていないのだ。

でも
書くことなにも思いつかなくて
「もっと書け、もっと書け」と言われるよりは
書きすぎて「削れ」と言われるほうが
書く立場としては楽だ。

とりあえず削ろう(-_-;)

・・・ 


映画館にフラフラと吸い寄せられる。
運良くなのか悪くなのか、観たいものがなかった。
無駄遣いをせずにすんだ。

図書館に戻って、
視聴覚サービスで観た。

屋根の上のバイオリン弾き
原題:Fiddler on the Roof
ノーマン・ジュイソン監督
1971年、米

 

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大好きなミュージカル映画のひとつだ。
1971年・・
そんなに前の作品とは、
とても思えない。

舞台は1920年代くらい、
帝政ロシアウクライナ地方
シュテットルの人々の物語だ。
(シュテットルは、ユダヤ人の小規模な共同体のこと)
原作が岩波文庫から出ているみたい。
わたしはまだ読んでいない。

www.iwanami.co.jp


テヴィエは妻と5人の娘とともに、
ユダヤ教の戒律と伝統をまもりながら
つつましやかに暮らしている。

長女ツァイテルに縁談がまいこむ。
相手は裕福な肉屋の主人。
持参金を用意できない
貧しいテヴィエの家にしてみたら、
またとない良い話だ。
じつはテヴィエ自身は、
この肉屋の男とあまり仲が良くない。
でも、相手はツァイテルにぞっこん。
テヴィエは、お金持ちの家に嫁げば、
娘が楽に暮らせるとおもい、
縁談を受けることにする。
しかしツァイテルにはほかに、
心に決めた人がいたのだ!
結婚は親同士が決めるものという慣習と、
愛する娘のほんとうの幸せとのあいだで
テヴィエは悩む。

次女ホーデルは
共産革命に燃える学生と恋に落ちるが、
彼は街頭演説をしていたところを
当局に逮捕されてしまった。
シベリアに送られた彼を
追いかけたいというホーデル。
娘の身を案ずるテヴィエだが・・・。

三女ハーバは
ロシア人の青年と恋仲に。
彼はつまりロシア正教徒、
テヴィエから見たら異教徒だ。
同胞でない相手との恋を許す、
これは愛する娘のためでも
テヴィエには耐え難い。
絶対にできそうにない。
そんなことをすれば
「自分が壊れてしまう」。
しかし、父に祝福してもらえなくて
涙にくれる娘の姿。
娘を許してあげられない自分自身を、
テヴィエは嫌悪し苦悩する・・・。

一方、当局からの
ユダヤ人共同体への迫害が
すこしずつ、激しさを増していく。
近隣のシュテットルで起きた
一斉検挙のうわさが飛び交う中、
テヴィエは、自分たちのシュテットルの
監視をしている幼なじみのロシア人から、
「上の命令で、近く、
お前たちの村を襲わなくてはならない」
と打ち明けられる。

・・・

歌やダンスシーンがたっぷりで
楽しく観られるが、
終盤では、
ミュージカル映画であることを
制作者側が忘れてしまったみたいに
音楽すらほとんどない
シリアスな場面がふえてくる。
静寂をおそれず
ゆっくりじっくり進むテンポ感は
いまの映画にはあんまりないものだ。

タイトルにもなっている
屋根の上のバイオリン弾き
が、ソロを弾く
長回しのオープニングはすばらしい。
ちょっと調べたんだけど、
ユダヤの古い伝承に、
こういうのがあるらしいのだ。
ネロ皇帝の迫害に遭って、
ユダヤ人たちが逃げ惑っていたとき、
狂騒のさなかに ふと頭上を見上げると、
建物の屋根の上で、
男がフィドルを弾いていた・・・。
細部は忘れちゃったが、
そんなような伝承で、
ユダヤ人たちの不屈の精神のシンボル
として語り継がれているんだって。
この謎のヴァイオリン弾きは
本作にとって必要な存在なのだ。
弾き手の姿は逆光で黒い影になっている。
詩的な場面だ。
吹き替えはアイザック・スターン
感情に訴えかけてくる演奏で、
早くも涙ぐんでしまう。

ユダヤ教徒の男性たちの
ボトルダンスのシーンや
ロシアの軍人(か、警官隊?)たちが
酒場でコサックダンスを踊る
シーンがすごく美しい。
シュテットルのユダヤ人たちと
それを管理する側である
ロシアの軍人たちとは
宗教的、政治的に相容れない立場だが、
その酒場だけは、
中立地帯のような扱いなのか、
ロシア人とユダヤ人が
おなじ店内で過ごしている。
長女ツァイテルの婚約祝いに、
テヴィエたちが歌い騒いでいるところへ、
ロシア人の客たちが
飛び入り参加する。
歌声自慢の若い男がきらびやかなテノール
テヴィエの宴に品よく割って入り
さらにダンスが得意なロシア兵が
ステップを披露して
「さあ、ご一緒に」といったふうに
テヴィエに手をさしだす。
場に鋭い緊張がはしり
同胞たちと視線をかわし
さて、と ひげをなでまわしたあと
テヴィエはその手をとって
一緒に踊りだすのだ。
エストサイドストーリーにも
似たような場面あるなあ。
体育館のダンスパーティー


うーん。いい。


あちらのほうの国々の
民族音楽はすてきだ。
なにがそうさせるのか、
聴いていると
たまらない気持ちになる。
音のつらなりのどこかに、
涙腺をゆるめる特徴的な要素があるのか
なつかしい・・・
いや、さびしくなるのだ。

当人の意向も聞かずに
親が結婚を決めちゃうなんて、とか
宗教や民族がちがうだけで
交際を許さないなんて、とか
今の感覚で観るとさっぱり
理解できない物語だろうが、
そうじゃない。
観ていればわかる。

テヴィエほど愛情深く、
人間くさく、
お父さんくさいお父さんはいない。

テヴィエは家族を愛している。
ごらんになるならば
ぜひそれを、ぜひ、どうか
それを理解していただきたい。

テヴィエを見ていると涙が出てくる。
お父さんみたいなにおいが
ただよってくる気がするくらい、
お父さんくさい。


宗教、民族、慣習、
歴史、愛情、苦痛、寂寥

言葉では、
色彩や触感までは表現できない。
いろんなことをはらんだ、
屋根の上のバイオリン弾き』みたいな
美しい映画を
これからもたくさん観たいものだ。