BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

プータロー7日目。ハローワーク。中村メイコ。

無職生活7日目
9月21日。


まえの職場は「20日締め」の商社だった。
21、22、23日あたりはすごく忙しかった。
つい先週まで自分はあの職場にいたんだよなあ。
すでに、ずいぶん遠いところまで、歩いてきてしまった気がする。



きょうは国民健康保険への移行と、
国民年金への移行の手続きをしに、
市役所の駅前出張所に行った。

3年前の失業期間にもつくづく思ったのだが
失業で仕事がなくお金がない上に
年金と保険料と税金まで払わなくちゃいけないとは。

払えません。
払えませんというか払いたくありません(=_=)

なにしろ収入がないわけなので
支出にたいして動物的、本能的恐怖心をいだく、
この心理をわかっていただけないですかね。

それで役所の職員さんに
「保険料や税金の支払いを猶予してもらうということは
できないものですか」と相談してみた。

自己都合による退職の場合、基本的には減免措置はないとのこと。

そうかー。ならばしかたない。
支払い通知がきても無視しておこう(!)。





そのあとハローワークに行き 失業給付の申請をしてきた。


今後どうするかまだ決めかねているが
申請しとくにこしたことはなかろう。


3年半前より、ハローワークの雰囲気が変わったなあ。

殺伐としたかんじが薄れた。
まえはもっと すっごく混んでいて
外にも人があふれていて
利用者さんはみんなイライラカリカリしていて
仕事が決まらないとかいろんなつらい事情をかかえてか、
泣きながら職員さんと面談している人もよく見かけた。
身なりがおせじにも良いとはいえない、
長期にわたる生活レベルの低下を、
全身で如実に表現しちゃってるような人も、少なくなかった。


でもそういうかんじが今日はほとんどなかった。拍子抜けしたくらい。

都内だとどうなのかわからないけど、
わたしが行くハローワークは都内じゃないから
ハローワークに行くことを考えるだけで気が重くなるような
そんな雰囲気じゃなくなってただけで、じゅうぶんだ。


あいかわらずハローワークの職員さんの対応は迅速かつ丁寧。
煩雑なはずのことでも説明がスパッと一発でわかりやすく、
まさにパーフェクトだ。

ちょっとくらい待たされたって、これなら全然イヤじゃない。






わたしはすこし
ぐーたらすることに飽きてきた(=_=)

体力的、マインド的に、もうすこしばかり充電しないと、
何かやってみたところできっとすぐに疲れてダウンするのがオチなんだが

ぐーたらのバリエーションが貧弱だ

お金がないと、出来ることや行ける場所が限定されてしまうから、
当然かもしれないが。

しかしながらわたしはぐーたらすることすら
上手にできないようだな(=_=)


将来の道をきめるうえで大事なことがひとつわかったね
ニート適性なし」。






図書館で何冊か本を読んだが
中村メイコさんのエッセイがおもしろかった。
「人生の終いじたく」。

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中村メイコさんて女優さんだが。
高峰秀子杉村春子黒柳徹子森繁久彌みたいに
日本のテレビ放送の最初期を支えた人のひとりだろう。

どうして急に中村メイコさんのエッセイを読もうと
考えたのかまったくわからない。


でもおもしろかった。
2歳で天才子役の名をほしいままにし、
現在にいたるまで70年以上も第一線で活動している。
「自分で言うのもなんですが“スター”でした」と書いて
ぜんぜんいやみにならない人だが、
両親の教育方針もあって、学校教育はほとんど受けなかったそうだ。

どう考えても「ふつうの女の子」の生活じゃなかったはずで、
タクシーや電車の乗り方を知らなかったり、
その他「ふつう知ってる」ことを知らないで生きてきた
70代のおばあちゃんであることは確かにまちがいない。

けれども、ズレてぶっとんでるいわゆる
「大女優」というわけでもない。

大事なところがピシッとしまっていて、
ほれぼれするくらい
なんだか素敵な、ものの考え方をする人だ。


完璧すぎないところもむしろ魅力的におもえる。


学校には行かなかったかもしれないが、
きっちりとしつけを受けて、育てられてきたし、
たぶん心身ともに柔らかくてタフだったんだろうな。




中村メイコさん自身のというより、彼女のお母さんの話なのだが
こんなエピソードがあって、かなり胸を打たれた。


中村メイコさんは、だんなさんのお母さん
(おしゅうとめさん)と同居していた。
おしゅうとめさんは、
「わたしは病弱なの。洗濯くらいは自分でやるけど、
ほかのことはいっさいあなたにおまかせよ」と言って、
孫の世話も食事のしたくも、まったく手伝ってくれなかったという。
中村メイコさんは女優業で多忙をきわめるなかで、
家事も全部しなくてはならず、非常に苦しんだ。
あるとき実家のお母さんに、電話でグチをこぼし、
手伝いに来てくれないかと泣きついた。

すると、いつもおだやかなお母さんが
このときばかりは激高しメイコさんを叱りつけた。
いわく、
もしあなたの家事をおしゅうとめさんが実際に手伝ったら、
いやなおもいをするのは結局あなたです。
おしゅうとめさんはあなたにいやな思いをさせないように、
身を引いてくださったのです。
しかも、「自分が病弱だから」と、角の立たない口実までつけて。
おしゅうとめさん自身は結婚したとき、
自分のおしゅうとめさんからあれこれと口をだされて
大変だったかもしれないし、
あの方の時代は好きな人と結婚することも
ままならないようなときだったはず。
自分が姑の立場になったら嫁をおもって身を引くのが、
明治の女のエチケットです。
そこまでしてもらって相手の真情をわかろうともせずに
グチをこぼすどころか自分の実家の母親に来させようとするなんて。
どかどか踏み込んであなたを手伝うような
恥ずかしいことはわたしには絶対できない。


メイコさんはお母さんの言葉にまったく言い返せず、
頭が下がる思いがしたそうだ。


あとあとお父さんの話でわかったところによると、
お母さんはメイコさんを電話で叱ったあと、泣いていたそうだ。
孫を遊ばせるためのおもちゃや、
必要なものをバッグにつめて玄関に置いておき、
娘のメイコさんがどうしても困ったときは
すぐかけつけられるように準備していたという。



後日談のとこまでくると
ちょっと出来すぎじゃないのかという気にならなくもないが

男女同権とか
女性の権利とか
型にはまらない家庭のありかたとかなんとか
そういうことはひとまず飛び越して

なんというか、
ああすごく立派だなと わたしは感じた。

なにが立派って
わがままである、無神経であると、
娘をガツンとしかりつけることができたこのお母さんが。


このしっかりとしたものの考え方をする女性の手でもって
メイコさんは育てられてきたんだなと感じた。




結婚、とか家庭、とかいうことを
ふだんわたしは一種のファンタジーみたいなふうにとらえており
いつか自分も結婚したりするのか?と
イメージすることすらできない
自分とはまったく関係のない世界というかんじがする。
だからこういう 結婚、家庭というものについて
書かれた本にもふだんはまったく関心がない

そういう内容の本だと知っていたら今回も読まなかったかもしれない。

でも知らないでなんとなく手にとったから
読むことができてよかった。


中村メイコさんという魅力的な人物について知ることができたからよかった。