BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

プータロー4日目/映画の感想- 『おおかみこどもの雨と雪』『夢売るふたり』-120918。

無職生活4日目
9月18日。

プータローらしく
昼から映画を2本も観てきた 。

・・・

おおかみこどもの雨と雪
細田守監督
日本、2012年

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www.youtube.com






夢売るふたり
西川美和監督
日本、2012年

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www.youtube.com





どちらもとてもよかったが
前者のほうが
問答無用の良作だった。


なにが泣けるのやら
自分でも良くわからないくらい
最後のほうはもう鼻が
ツーンツーンとなり通しで、
落涙を止めることができず。

おおかみこどもたちの
可愛らしさといったらなかった。
あと、風景の美しさ。
目にしみるようなあざやかな色彩。

小さい頃は、
雪のほうが動物的で、
どう考えてもオオカミ寄り。
自分のオオカミとしての性を
解放することを、恐れていなかった。
だれに教わったわけでもないのに。
これに対し
雨はナイーヴで大人しく、甘えん坊。
いかにも手厚い庇護が必要な
人間の子っぽかった。

ふたりが大きくなってきてから、
それぞれの傾向が、
はっきりと逆転したのは、
はじめ、意外な展開におもえた。

雪のほうが、長じてからはまだまだ
親が守り導く必要がでてきて見えたのに、
お母さんがあのとき、
雪でなく雨を追いかけたのが、
はじめ理解できなかった。

観ている側としては
そのあたり冷静であるから、
雨はもう自分の道を
選び取って進み始めている、
ということが、観ていてわかるので
なんでそれが
お母さんにはわからないのかと
なぜ雪を見てやらず
雨を追いかけるのかと
いらだちすらおぼえた。

けれども
あとでちょっとは理解できた。
お母さんにとって雨の成長は
早すぎてとても追いつけなかったし、
彼が はや自立への道を
歩み始めたと気づいていたけど
認めたくなかったんだなと。
もう会えないとわかったから
それで追いかけてしまったんだなと。
雪との時間は
まだすこしあるけど、
雨との時間はもう残されていない、
そうわかったから追いかけずには
いられなかったのだろう。

雨は末っ子であり息子だ。
幼児期はもっと甘えんぼうだった。
お母さんとしては
可愛くて構いたくてしかたない。
それに彼は 亡きお父さんに
容貌が非常によく似ている。
お母さんとしては、
夫を早くに亡くしたぶん、
夫に似た息子を手放したくない。
でも雨はほんとうはずっと前から、
なみはずれて内省的で、
早熟な子に成長していった。
みずからの内なるオオカミに、
実は姉の雪よりも敏感に気づき、
受け入れ、それに親しむようになっており
またある時期からはかなり積極的に
それを「育てて」きてもいた。
そのことは、雨の心身が
人間の10歳ではなく、
オオカミの10歳により近い形と速度で
成長することを、いっそう促した。

雨の成長があまりに急速だったので
お母さんは息子が
人間でなくオオカミとしての自分の性を
選び取ろうとしていたこと、
もういつ親元を旅立っても
おかしくないということを
受け入れる準備が
間に合わなかったんだろう。

状況的に、
そうせざるをえなくなってから
やっと あわただしく
息子をおくりだす
心の準備を始めたように見えた。

よく考えると
どんなに前もって知らされて、
じゅうぶんに時間が与えられたところで、
親が我が子を社会へ送り出す「準備」なんて
たぶん、できるもんじゃないんだろう。
親になったことがない わたしだけど
なんだかそれは感じた。
親になってみないとわからない。
ものすごい体験なんだろうな。
子どもを育て、巣立たせるというのは。

あのお母さんはすごく若いうえに
オオカミと人間のハーフを
ふたりも育てるという
特異な境遇にありながら
そのわりにはパニックや
不適応を起こさずに
かなり上手にのりこえたとおもう。
すべての子育てがオーダーメイドで
あろうとおもうから
オオカミと人間のハーフという
設定に本作ではなっているが
どの親子関係も どの子育ても
みんな ある意味では特異であり
これが正解、というのが
ないのだとおもう。

雨もそうだが、
姉の雪の成長の描写も
すばらしかった。
あの雨の日の、
教室の場面はかなりこう・・
一種のセクシーさというか
なにかすごく危うい良さがあった。
息をのむような美しい場面だった。
あれはよかった・・
うまい・・

とてもすてきな映画だった。
音楽も、やさしくて、
なおかつどこか容赦がなくて、
映画にぴったりだった。

なぜタイトルが
「~雨と雪」なのだろう。
きょうだいの生まれた順でいえば
雪が姉で先、雨が弟であとだ。
順番ならば
「~雪と雨」だろうとおもう。
自然現象のながれでいえば
雨があってそれが凍って雪になるので
その意味ではべつにおかしくはないし
あめとゆき、のほうが
ゆきとあめ、よりもなんとなく
語呂がいいようにも感じはするが。
でもきょうだいの名前を
タイトルにするならば
生まれた順にするのではないのか。

太郎かわいやの母親の性、
あまりに早く大人になったのを
受け入れなくてはならなかった
母の思いにめんじて
息子の名を先においたのだろうか。
または、息子との切なすぎるそれによって
子離れの練習を1回 することができたので
次は娘のターンです、という意味で
・・・
つまり雨があってそれから雪になるように
・・・
それで雨を先にしたのかもしれない。

・・・

夢売るふたり』もおもしろかったが
西川美和監督作品としては、
まえに観た『ゆれる』(2006年)の方が
強力に胸にくるものがあってよかった。

movie.walkerplus.com


おおかみこどもの雨と雪
を観たあとだったので
疲れててあまり集中できなかった、
というのもあったかもしれない。
うーん。
いや、決して、悪くはない
おもしろかったと思う。
共感はあまりできなかったけど。

映画を1日に2本とか3本とか観るのは
もっと元気なときにしたほうが
いいみたいだ。
感動体験は 受け止めるほうの
コンディションも大切なのだ。