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BRILLIANT CORNERS-2

観た映画・読んだ本など関心ごとへの感想メインの、なんということのなさすぎる身辺雑記帳です。 少しずつ、いろいろ更新してまいります。 お気が向いたらお読みいただければさいわいです(^O^) ブログのタイトルは、セロニアス・モンクのアルバムから。「すみずみまで光り輝く」というような意味だそうで、なんとなくいいなとおもうもんで。

「ヘルタースケルター(2012)」。「THE GREY 凍える太陽 The Grey(2012)」。

行きつけの映画館のポイントがたまってて、
1本無料で観られるのをいいことに、2本はしご。

ヘルタースケルター
蜷川実花監督、2012年、日本)

THE GREY 凍える太陽
(原題:THE GREY ジョー・カーナハン監督、2012年、米)

どちらも良かった。
この2本を選んだのはまちがいじゃなかったと思えた。












ヘルタースケルター

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movie.walkerplus.com






その場の思いつきで観ることを決めた。
ちがうのを観るつもりだったけど、
こっちのほうがもうすぐ終わってしまうらしかったし、
なんとなく、観ておこうと思った。

良かった。
執拗に、ただひとつのことを言おうとして、闘っていた。

映画を観ていると、この「言おうとする」っていう姿勢が、
あまり感じられない作品がけっこうある気がしていて

そういうのを観るととてもイヤな気持ちになる。
「じゃあ一体なんのために映画作ったんだよ!」って
作り手側の胸ぐらをつかんで問いただしたくなる。

何も感じられない映画や
感じられないわけじゃないが力が脆弱な映画を
たとえば興行収入ランキングで
上位だからというだけで5本も観るよりは

たとえ語り口が独善的であっても
強力な意思(意地)を押し付けてくる
ヘルタースケルター」のようなのを1本 観たい。


ただ 「ヘルタースケルター」では
その「言わんとしてること」の内容が、
あまり個人的に関心をもてることではなかったか、
なんだろう
切り口的に自分がまだそれを受け入れたり
共感したりできる段階ではなかった、のかな

だからおもしろかったかどうかでいえば、そんなにおもしろくなかった。

それでも最後まで集中して観ることができたのは
沢尻エリカの支配力にひっぱられてのことだった。


全身整形で完璧な美貌を得て、スターの地位を獲得したタレント、
という 主役「りりこ」を、演じていたのが沢尻エリカさんだった。

女優としてのこの人については、ほとんどなんにも知らなかった。

わたし、この女優さん、すきだ。
根性の人だ。
ここまで見せてくれる女優さん、あまりいないんじゃないだろうか。
若いのに感心だ(T_T)
この人よりも美しかったり、
うまい演技をする女優さんはいるかもしれない、
でも、
「りりこ」は彼女でなければ、だめだったと思った。
ぴったりだったんだろう。

ビルの屋上みたいなところで、わんわん泣く場面。
あれだけでこの映画を観た意味はあったかもしれない。
なんというか・・・。

誤って、カゴから外に飛び出した、美しい手乗りインコを見てるみたいだった。
生まれたときから人に飼われてきたので
外に出たはいいものの、どうしていいかわからない。
自分のなかの野性をうまく解放できなくて、
キョトンと木の枝にとまってる。
鮮やかな羽色がまわりの風景からすごく浮いてる。
カゴから出てしまうとインコって小さく見える。
飼い主は、つかまえたいが、
手を伸ばしたらさらに遠くに飛んでいってしまいそうで
なすすべもなくただ見つめてしまう。
もうカゴに戻ってはこないだろうなと、さびしく予感しながら。

アメリカン・ビューティー」っていう映画にでてきた、
挑発的な女の子のことも思い出した。
蠱惑的な態度と美貌で、主人公の男を魅了する。
ところが、この子はほんとは、
同年代のふつうの女の子となにも違わない。
弱くて強がり、優しくて臆病、
自分はみんなと違うんだとまわりに認めさせたくてしょうがない
ごくごくふつうの子なのだ。

この子の存在が、
アメリカン・ビューティー」においては
ものすごく救いになっていた。
というのはあの映画にでてくる人たちは、
みんななにか、ちょっと狂ってるからだ。

あの女の子が、素直になって自分のほんとうの姿をみせたとき、
永遠かのように長かった夜が、ついにしずかに明けていくみたいだった。
なにか、冷静さをとりもどさせてくれた。

映画を観ていたわたし自身にもだし
主役の男にもだし
映画そのものにも。


ヘルタースケルター」の、
あのビルの屋上みたいなところの場面には、
いろんなことを思わされた。

ただアメリカン・ビューティーとはちがって
「りりこ」が泣いてもだれも冷静にはならない。
もとの場所に帰れば苦悩が増すだけと知りながら、
りりこは自分の意思で帰ってくる。
まだまだ物語がつづくのだ。



沢尻エリカには、年を重ねたとき、
偉大な女優さんになっていてほしい。
観てみたかんじ、なんとなく、
あまり器用なほうではないようだったから
なんだかかわいそうなのだが、
できれば長く応援したい。












THE GREY 凍える太陽

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物語の展開と映像で魅せる映画だった。


狙撃手として働く、オットウェイ(リーアム・ニーソン
という男が主人公。
彼の職業はプロの狙撃手だ。
石油採掘場で働く作業員がオオカミなどに襲われないように、
ガードする仕事。

オットウェイには愛した人を失った過去があり、
以来ずっと、自殺願望をいだいている。

休暇で家に帰る労働者たち(オットウェイも)
をのせた飛行機が、アラスカの雪原に墜落する。
オットウェイほか数人が生き残ったが、
携帯不通、
食べ物なし、
猛吹雪で救助も期待できない、
しかもそこは運悪く、オオカミのなわばりのど真ん中であるようだ。

人食い化したオオカミたちが、
においをかぎつけて何度となく生存者たちを襲う。

オオカミのなわばりは非常に広いので、
すこしばかり場所を変えても狙われることには
大して違いがないらしいのだが
だからといってこのまま同じ場所にいても、
凍えてか餓えてかオオカミに食われてか、
とりあえず死を待つだけだ。
身を隠してオオカミに対抗できる森まで移動しようと、
生存者たちは歩き出す。

アラスカの極寒と
オオカミたちとの死闘。




ココココここ怖い・・
そして、寒い・・





真夏に公開ってところが粋だなあ・・
アメリカさんでは1月だったみたいだけども。


震え上がったよ。


オオカミたち
(CGのはずだが観てるこっちもパニック状態で、本物にしか見えない)の
あの統率のとれまくった動きの、美しさといったらなかった。

むりだよ。
あんなのに、かなうわけがないだろ。


現代においても人間は

環境しだいでいくらでも
原始時代みたいな死に方で死ぬんだね(-_-;)
ついさっきまで話してた相手でも
条件がそろえばころっと死ぬんだよ。
なんて脆いんだ。
便利な道具をいろいろ持っていても、それが使えなければ、
身も心も、一糸まとわぬ丸裸とおんなじだ。


人間は分をわきまえて
おとなしく暮らしたほうがいい。という気がしたわ。




愛した人を失って
死にたくて死にたくてしょうがなかったはずのオットウェイ。
彼の目の前で
生きたかったはずの仲間たちがつぎつぎ死んでいく。

なぜこんなことになるのか、
天に神がいるならなんで何もしてくれないのか、
あんたを心から信仰してた仲間だっていたのに死なせやがって!と
悲痛な叫びを空にぶつけていた。

もうかわいそうで、見られたもんじゃなかった(T_T)

彼の天なるものへの不信は、つのっていく。
邦題サブタイトルの「凍える太陽」はちょっとダサいと思ってたのだけど
「太陽」が、もし「神」ということを言ってるなら
これは天なるものの沈黙、ってことを
作家の遠藤周作もいっている「神の沈黙」ということを
指しているのかもしれないなと考え直した。


苦悩するオットウェイだが
生存者たちのなかでただひとり自分だけが、
いくらかオオカミの生態について知っているという状況、
そして亡き父が残した一編の詩の文句
("キーワードのくりかえし"が得意なアメリカ製のこの映画において、
すごく重要なキーワードになっているし、テーマの根幹をもなしている)

死んで楽になりたかった気持ちと
本能の呼び声とのあいだで
オットウェイが葛藤するようすは相当よかった。
葛藤というか、生存本能のほうが完全に勝ってたけど。


でも、勝てなかった仲間もいた。
その男は、せっかく生き残ったのだが心が折れてしまった。
なにかとまわりに迷惑をかけ、あんまり愉快なやつじゃなかった。
でも、人間らしい弱さの部分がふつうよりも心の層の浅いところにあったので、
それがただ早めに表に出てしまっただけとも言える。
だれでも彼のようになりえるとおもった。

心が折れたこの男と、オットウェイのファーストネームが
偶然おなじだったというのが 工夫されててよかった。



リーアム・ニーソンは、
むしろ年を重ねてから肉体派、アクション系の映画に
トライしはじめたなあとおもう。
特攻野郎Aチームとか。
え、これがシンドラーのリストのあの人ですか。と思ったもん。
特攻野郎を観たときは。

オットウェイ役はもともと
ブラッドリー・クーパーというワイルド系二枚目の若い俳優さんが
やるかもしれなかったらしい。
でも、結果的にリーアム・ニーソンに決まったそうだ。

ブラッドリー・クーパーがもしやったら、
彼にとって、(えらそうなこと言うようだが)
俳優としてできることの幅をひろげる、
すごくいい機会になったかもしれない。
コメディや恋愛ものだけじゃないんだと、
みんなに認知してもらえる。
彼じゃダメだったとは別におもわない。

でもリーアム・ニーソンでほんとによかった。

作品のテーマを表現するのに
彼のいろんな意味での大きさ、深さ、年季が、必要だったとおもう。


かっこよかったよ、オットウェイ。
よくがんばった!




人によって好き嫌いはあるかとおもうが
観て超ガッカリ、お金返せ。ってことはたぶんないだろう。


ヘルタースケルター、THE GREY、どちらもぜひごらんあれ。






という、これは じつは昨日の話。




きょうはまた暑そうだなあー(-_-;)