BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-「ファイヤーフォックス Firefox(1982)」-120727。

クリント・イーストウッドという
映画監督/俳優が好きだ。

この人が監督した映画や、
出演した映画で、
これまでに観たものは、
例外なくみんなおもしろかった。

なかでも好きな作品に
ファイヤーフォックス」がある。

先日も観直してみた。
わたしの父が
イーストウッドのファンだったらしく
「ダーティ・ハリー」とかよく観ていた。
うちにはイーストウッドの映画の
ビデオテープがたくさんあるのだ。

ファイヤーフォックス
原題:Firefox 
クリント・イーストウッド監督・主演、
1982年、米)

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movie.walkerplus.com

東西冷戦下。
ソ連で新型戦闘機が開発された
という情報が、NATOにもたらされる。
完全ステルス機であることにくわえ、
パイロットの思考を読み取らせることで
ミサイル発射などのミッションを
すばやく実行する など
ほかのどんな機種よりも
進んだ機能をもっているという。
その名も「ファイヤーフォックス」。

NATO加盟各国は
ファイヤーフォックスに対抗できる
優れた戦闘機を作りたいが、
とてもすぐにはできそうにない。
そこで、ここはひとつ
ファイヤーフォックスを1機
失敬してきちゃおう!
ということに。
実機をその目で見て
つくりかたを研究できれば
それが一番早くて確実に決まっている。

敵対国のソ連に忍び込み、
最新の戦闘機を盗み出し、
それを操縦して 乗って帰ってくる。
このインポッシブルなミッションの遂行人に
ガントという男が選ばれる。
彼は米空軍の元凄腕パイロットだが
戦時体験がもとで、
心に癒えない傷を負っており、
退役して静かに田舎で暮らしていた。
パイロットとしての腕がいいのはもちろん
母がロシア人で、
ロシア語をネイティヴに話せることから
NATO公認盗っ人を
つとめることになってしまった。
はたしてガントはソ連から
ファイヤーフォックス
持ち帰ることができるのか。
という筋だ。

古いけど、おもしろい。
話がわかりやすくすっきりしていて、
最後まで楽しめるように工夫されている。
具体的には、
2時間の映画の前半と後半で
テイストをみごとに変えている。
そのくせすごくその切り替えが自然だ。
ひとつの映画のなかで
テイストを変えるやりかたは
ほかの映画でもなくはないとおもうが
だいたい
「中途半端に、2本の映画を観た」
ようなかんじがするというか
ちぐはぐで
おもしろくなかったりするものだ。
でも、本作では、
テイストが途中で変わっても
おもしろさは失速しない。
むしろ加速する。

前半は、
ガントがソ連の軍中枢部に潜入し、
ファイヤーフォックス格納庫に迫るまでの
スパイ・アクション。
後半は、
シンプルなエア・コンバットだ。

前半と後半のかわりめに、
違和感がないのは、
音楽の力も大きいかなあとおもう。
ガントがファイヤーフォックスに向かって
しずかに歩いていく場面の音楽は
いま聴いても、まずほかにはないかんじ。
シンセサイザーかとおもうが、すごく個性的だ。
それでいて場面にぴったり合っている。
緊張感がすこしずつ高まっていく曲調は
後半開幕への序曲にふさわしい。
ただ後半突入直後の音楽は
なんかできそこないの
サンダーバード」みたいで
すごくダサいのだが笑

ソ連に潜入してからというもの、
ガントは行く先々で
尾行されるわ殺されかけるわ、
気の休まるときがない。
そもそも、いまでいうPTSD
静養中の身のガントに
いくら優秀だからとはいっても
こんな仕事をさせるべきではないのだ。
おかげで彼はすっかり参ってしまい、
みていて気の毒になるほどだ。
だれか 今からでも
代わってやれよ、ってかんじ。

そんなガントが
ファイヤーフォックス
操縦桿に手をかけたときから
人が変わったようになる。
腕利きのパイロットの血が
呼び覚まされるかんじだろうか。
このガントの変貌ぶりも
本作のみどころだろう。

情けなく弱り切ったガントも、
二枚目のイーストウッドがやれば
悪くはないけど、
やっぱり後半からの
ガントのほうが、かっこいい。

エア・コンバットパートは
すごくシンプルながらも
戦闘機って、こんなに
アクロバティックな動きができるんだ!
と目をみはるシーンの連続。
特撮なんかは
今の映画と比べものにならないが
技術的な制約があるなかで
よくぞこれほどまでに
迫力あるシーンを。

・・・

怪しいやつが
潜入してきたらしいと
警戒するソ連側において、
主力政党の党首が
じつに鼻持ちならないイヤなおっさんだ。

招かれざる客であるガントに
無線で話しかけるところは
貫禄と威圧感があってなかなかよかったが、

事態が悪化すると馬脚をあらわした。
自分はなにもできないくせに
横からいらぬ口をだして
「どうするつもりだ!」とか
「ああするべきではなかった」とか。

錆び付いた昔の知識しか
持ち合わせてないのに、
勝手にしたっぱに指示を出して、
現場責任者を困らせる。
地位が無駄に高いので、
みんな逆らいにくい。
そのくせ自分の出した指示が
まったくの見当はずれで、
うまい結果がでないと
「おまえのせいだ」などと
現場責任者になすりつける。

最低の上官だ。
こんな人とは一緒に仕事をしたくない。
どこにでも困った上司はいるんだね。

・・・

本作は東西冷戦をテーマの根幹に据えた
物語ではあるが
そういう物語にいかにもありそうな
政治的イデオロギーの押し付け感が
おどろくほど ない。
わたしが本作を好きだとおもう理由は
そこにある。
その点を 薄い、なまぬるいと
いう人もいるかもしれない。
でもわたしは
公平だ、うるさくない、
いつの時代にも観やすい、
と 感じる。

旧式で狭量、
威張りっぷりだけ超一流と、
強烈にカリカチュアライズされた
「むかつく上官」が
ソ連側にいる、という点には
「東西冷戦時代のハリウッド映画」感
をさすがにちょっと感じるが、

「わが国が正しい」みたいな
戦争ものによくある、鼻につく雰囲気は
それほどないのだ。

あまり重いことを気にせずに、
ますはゆったりと楽しめる映画だ。

そう、ふしぎなことに
「ゆったりと」なのだ。
いわば戦争映画であり
アクションでありサスペンスであり
癒しの効果などは
期待できない。はずだ。
だが
ファイヤーフォックスを観ると
心がほっとする。
すっきり明快なお話運びに、
清潔感、理性と秩序が感じられる。
そして昔の映画ならではの、
ゆるやかなテンポ感。

・・・

スカッと気分転換をしたい、
でも
人が10分にひとり死ぬとか、
車とか建物が5分に1回爆発するとか
そんな映画が観たいわけじゃない・・・

そんなときは
ファイヤーフォックス
が うってつけだ。