BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『探偵はBARにいる』-120427。

橋本 一 監督
2011年、日本

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ただなんとなく、邦画が観たい
というだけの理由で観た。
観て大正解だった。
おもしろかったし、好きだった。
どことなくなんとなく
古くさいところがじつによかった。
松田優作の「探偵物語」の
ああいう古くささというか。
映像が古くさい。
古いのに新しい。

松田優作の息子の
松田龍平が出ていた。
あの松田龍平の、
どこをどう搾ったり漉したりすれば、
あんなもっさりエキスが
抽出されるのか、ほんとうに謎。
いわれなければ、松田龍平
わからなかったかもしれないくらいの、
モッサリズム。
もっさり感をだすのに、
少し体重を増やしたりしたのか?
けれども自然体で気の優しい、
すごくいいキャラクターだった。
エンジンがかかりにくい
ポンコツイカーを、
なだめたりすかしたりする
場面が笑えた。
そのやりかたが有効だと
確信しきっていて、
同乗の探偵にも
真剣なまなざしで手伝わせていた。
じつをいうと
「優しく扱うと機械が応えてくれる」
というあの考えかた、
わたしもすごく理解できる。
わたしもコピー機
パソコンに よくやる。
そして有効だ。
ほんとに。いやほんとほんと。

大泉洋の探偵は暑苦しかった。
どういうキャラクターだと
おもって観ていればいいのか
よくわからなかった。
わたしは大泉洋じたいも、
どういう人だとおもえばいいのか
よくわからない。
まじめにやっていたのだとしたら
申し訳ないが、
いかんせん顔がおもしろすぎた。
ただ、あの探偵のキャラクターを、
ほかに誰が演じたら、もっとよかったのにとか、
そんなことはおもわなかった。
だから、はまっていたんじゃないかな。

悪者役がよかった。
悪訳が、ああいう、
からして腐りきった、
最低なやつであるということは、
この手の映画にとって 
非常にだいじだとわたしはおもう。
脳が腐っているというとこがだいじ。
救いようのなさが必要。
高嶋政伸とはとても信じられなかった。
すっごくよかった。
気味の悪いイヤなやつや、
悪者ではないにせよ
卑怯でみみっちい人間などは、
高嶋政伸が演じたあの男のほかにも、
何人か登場した。
悪者があまりにも大勢でてくる映画は、
誰が誰やらわかりにくく
中途半端におもえる場合もあるのだが、
本作ではどのキャラも
みごとに種類のちがう、
また物語における位置づけもちがう、
それぞれに鮮烈な印象をもって
存在していた。
わたしは本作の人物相関図や、
各キャラクターの説明書きを
書けといわれたら
きっとかなりうまく書けるとおもう。

本作の松田龍平高嶋政伸のように、
役者さんが
わたしのイメージを
完全にぶちこわして、
おもいっっきり振り切れた
演技をしてくれるのを
観るのはすきだ。
そういう俳優がいることを
ありがたいとおもう。

細かいところが、
観ているといちいちおもしろかった。
画を楽しむのに夢中になって、
何回か物語が理解できなくなり、
巻き戻した。

終盤の小雪のシーンも、
何度か巻き戻して観た。
ただ、これは
話が理解できなかったからではない。
とても美しかったからだ。