新野剛志「FLY」(文春文庫)を読んだ。
いまいちだった。
前25%くらいは、かなりおもしろかったし、情景描写もよかった。
なんとなく、映画で観た「世界の中心で、愛をさけぶ。」の、
あのノスタルジックな雰囲気をほうふつとさせるものがあった。
それに、
この小説で扱われているテーマじたいは、個人的には好きだった。
でも、おもしろさがかなり早い段階で失速してきた。
人物の書き分けがいまいちなされていないというか、特徴がなかった。
どのキャラクターにも。
そのせいか、誰がどうであろうとあまり感情移入ができなかった。
感情の部分で読ませなければ意味がない物語だったのに、
それじゃあ、ちょっとなあ。
あとは過去にメインキャラクターたちの身に起こったという
事件の真相の部分を、たよりに読み続けるしかなかったが、
その過去の事件というのも、
とちゅうで容易に想像できてしまい、しかも想像どおり、
それ以上でもそれ以下でもなかった。
正直、最後まで読み通すのがかなりしんどかった。
著者が、最後まで投げ出さずに書ききったことは偉大だとおもう。
だがそれは読者には関係のない偉大さだからな。
この人のほかの本まで読みたいとはおもわない。
高校生から二十歳くらいまでの若者むけの小説だったのかもわからん。