BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

小説『転落』/マンガ『11人いる!』-120129。

永嶋恵美
『転落』
講談社文庫

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bookclub.kodansha.co.jp


これはけっこうおもしろかった。
先が気になって、
読むスピードがふだんの倍速くらいになった。

出てくるキャラクターがみんな
底意地がわるくて下品、
姑息で独善的、
弱くみせかけてしたたか、
そんな人たちばかりだった。
「良い人」や、いてくれてよかったと
おもえるようなキャラクターが
ひとりもいなかった。
「ボク」に食事を提供する見返りに、
自分の言うことをきかせようとする
小学生の女の子が出てくるのだが、
この子なんてほんとうに最悪で、
読んでてかなりいらいらした。

著者の眼には人間がこのように
見えているということなのかもしれない。

著者の神経がゆがんでいるとか穿ちすぎているとか
病んでいるなどといいたいわけじゃないし、
文章からもそういう
本人にすらコントロールできずに
にじみ出てしまったようなゆがみは感じられない。
要は人間の本質のある一面をよくこの人は見ていて、
そこだけを描き出してみせたようなかんじか。

あれみたいだな・・
ヒエロニムス・ボッシュの絵みたいだな。


・・・


萩尾望都
『11人いる!』
小学館文庫

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comics.shogakukan.co.jp


萩尾望都のマンガがすきなので
タイトルはもちろん知っていたが、
SFにあまり感心がなく 
これにかんしては読みたいとおもうのが遅かった。
萩尾望都のマンガのなかでは
トーマの心臓とか 
ふつうの世界が舞台の人間ドラマもののほうがすきで、
そっちばかり先に読みつぶしていた。

それにしても『11人いる!』
たしかにこれが30年以上もまえに
少女マンガ雑誌に発表されたというのは・・

あたらしいっ!!!

日渡早紀『僕の地球を守って』や、
羽海野チカさん短い読み切りなんかに
こういうのあったなあ・・・とおもったけど、
そりゃそうだ。
日渡早紀羽海野チカが、
萩尾望都から影響をうけているのだ。
似ててあたりまえだ。